1990 Fiscal Year Annual Research Report
シュウ酸生成機構と原発性高シュウ酸尿症I型についての研究
Project/Area Number |
01480153
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
市山 新 浜松医科大学, 医学部, 教授 (90025601)
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Keywords | 原発性高蓚酸尿症I型 / セリン:ピルビン酸トランスアミナ-ゼ / セリン:ピルビン酸トランスアミナ-ゼcDNA / セリン:ピルビン酸トランスアミナ-ゼ遺伝子 / 原発性高蓚酸尿症I型の遺伝子診断 / ペルオキシゾ-ム / グリオキシル酸 / チアゾリジンー2,4ージカルボン酸 |
Research Abstract |
蓚酸は哺乳動物では終未代謝産物であり専ら尿に排泄され,しかもそのCa塩は水に難溶であるため尿路結石の原因となる。最近,常染色体性劣性遺伝疾患である原発性高蓚酸尿症I型(PHl)の原因が肝臓ペルオキシゾ-ムのセリン:ピルビン酸アミノ転移酵素(SPT)の欠損であることが明らかにされた。本研究は,1.未だ不明の蓚酸生成機構を解明すること,2.ヒトSPTのcDNAおよび遺伝子をクロ-ン化し構造を明らかにすることによりPHlの早期診断等の道を拓くことを目的として開始し,目的2は昨年度中にほぼ達成した。単離cDNAを培養COS細胞で発現させると産物は特異的にペルオキシゾ-ムへ移行することから,ヒトSPTは分子内に同オルガネラ標的シグナルを持つと推定された。本年度はたまたま一人のPHl患者が死亡したので,この患者のSPTとその遺伝子についての解折を行った。患者肝臓からクロ-ン化したSPTーcDNAの塩基配列にT(613位)→C点変異が見出され,その結果アミノ酸配列にser→Pro変換が推定された。この点変異により新しくSmaI部位が形成されたので,これを利用してSPT遺伝子にも同変異が存在することを確認し且つこのタイプのPHlの遺伝子診断法を確立した。この患者ではSPTーmRNAレベルは正常の約3倍であるのにSPTはほとんど存在しないことからSPT分解の亢進が推定された。蓚酸生成機構に関しては,直接の前駆体であるグリオキシル酸から蓚酸への酸化触媒能を持つキサンチン酸化酵素,グリコ-ル酸酸化酵素,乳酸脱水素酵素のいずれについても生体内で実質的に蓚酸生成に関与しているという積極的な証拠は得られなかった。しかし,グリオキシル酸とLーシステインの付加化合物であるチアゾリジンー2,4ージカルボン酸をラットに経口投与すると僅かではあるが蓚酸が生成されたので,現在この付加化合物を経由する経路の蓚酸生成への関与の度合を検討中である。
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[Publications] Oda,T.,Funai,T.& Ichiyama,A.: "Generation from a single gene of two mRNAs that encode the mitochondrial and peroxisomal serine:pyruvate aminotransferase of rat liver." The Journal of Biological Chemistry. 265. 7513-7519 (1990)
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[Publications] Yanagawa,M.,MaedaーNakai,E.,Yamakawa,K.,Yamamoto,I.,Kawamura,J.,Tada,S.& Ichiyama,A.: "The formation of oxalate from glycolate in rat and human liver." Biochimica et Biophysica Acta. 1036. 24-33 (1990)
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[Publications] Nishiyama,K.,Berstein,G.,Oda,T.& Ichiyama,A.: "Cloning and nucleotide sequence of cDNA encoding human liver serine:pyruvate aminotransferase." European Journal of Biochemistry. 194. 9-18 (1990)
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[Publications] Yokota,S.,Funai,T.& Ichiyama,A.: "Organelle localization of rat liver serine:pyruvate aminotransferase expressed in transfected COSーl cells." Biomedical Research. 12. 53-59 (1991)
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[Publications] Nishiyama,K.,Funai,T.,Katafuchi,R.,Hattori,F.,Onoyama,K.& Ichiyama,A.: "Primary hyperoxaluria type l due to a point mutation of T to C in the coding region of the serine:pyruvate aminotransferase gene."
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[Publications] 市山 新,小田 敏明,船井 恒嘉,西山 孝三: "泌尿器外科第3巻第8号ー分担執筆:原発性高シユウ酸尿症I型" 医学図書出版株式会社,東京, 118 (1990)
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[Publications] Ichiyama,A.,Oda,T.,Funai,T.& Nishiyama,K.: "Vitamin B6 and Carbonyl Catalysis (Proceedings of the 8th International Symposium on Vitamin B6 and Carbonyl Catalysis,H.Wada,K.Soda,T.Fukui & H.Kagamiyama,eds.)ーーSynthesis and organelle localization of serine:pyruvate aminotransferase in rat & human liver." Pergamon Press,Oxford,