1990 Fiscal Year Annual Research Report
寄生虫による宿主免疫系の修飾ーフィラリアおよび糞線虫感染のT細胞変調作用と成人T細胞白血病ウイルスの細胞内増殖との関連ー
Project/Area Number |
01480172
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
藤田 紘一郎 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (90053107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
月舘 説子 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (40121256)
山岡 國士 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (50220231)
山本 興太郎 東京医科歯科大学難治疾患研究所, 教授 (40000971)
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Keywords | フィラリア / ミクロフィラリア / ILー2 / ILー2R / 免疫回避 / CD^<8+>細胞 |
Research Abstract |
寄生虫は何故、宿主の免疫応答に逆らってぬくぬくと生き続けることができるのであろうか.寄生虫のなかには、宿主の免疫系に直接的あるいは間接的に作用して、本来宿主が持っている免疫応答に変調を起こさせるものが知られている.われわれは、宿主の免疫の場であるリンパ系に寄生しながら他の寄生虫に比べ、より長期間宿主体内に寄生するフィラリアについて、それらの変調作用を研究してきた.本年は主としてフィラリアによる宿主免疫系の修飾について、その一部の成果を報告する. 昨年度までの研究は、フィラリア感染は宿主に特別なCD8+細胞を産生し、この細胞が宿主の非特異的な免疫応答の低下を誘導していることを明らかにした.本年度は、フィラリア感染が宿主に非特異的な抗体産生の低下以外に、特異的な抗体産生の抑制や免疫学的な細胞性傷害の減弱を、別の機序によって誘導している可能性を明らかにした. 今回、われわれはフィラリアの一種<Brugia>___ー <pahangi>___ーをLewis系ラットに感染させ、ラットのリンパ系のインタ-ロイキンー2レセプタ-(ILー2R)の発現能力を比較した.ラットの末梢血リンパ球をPhytohemaggrutinin(PHA)で刺激し、ILー2Rの陽性率を調べた.その結果、ミクリフィラリア(mf)出現ラット群の陽性率増加が、mf非出現群や対照群に比べ、有意に低かった.また、この現象がmf出現後にみられること、リンパ球を正常ラット血清で培養することにより、ILー2R発現が回復することが観察された.以上の結果は、mfに関係ある血清中の何らかの因子がILー2Rの発現を抑制し、これが抗体産生や宿主の虫に対する細胞性傷害反応の抑制を誘導し、フィラリアという虫が宿主体内でぬくぬくと生き続け得る状況を作り出しているものと思われる.
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[Publications] Horii,Y.,Fujita,K.et.al.: "Eosinophil hyporesponse of jirds induced by microfilariae of Brugia pahangi" Am.J.Trop.Med.Hyg.41. 183-188 (1989)
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[Publications] Nakanishi,H.,Fujita,K.et.al.: "The role of macrophages on the expression of sex diffrence in the susceptibility to Brugia pahangi infected in C57BL/6 mice" J.Helminth.63. 213-217 (1989)
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[Publications] Owhashi,M.,Fujita,K.et.al.: "Nonーspecific immune suppression by CD8+ T cells in Brugia pahangiーinfected rats" Int.J.Parasitol.20. 951-956 (1990)
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[Publications] Nakanishi,H.,Fujita,K.et.al.: "Ageーrelated changes of the susceptibility to injection with Brugia pahangi in male and female BALB/c mice" Parasitol.Res.76. 283-285 (1990)
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[Publications] 藤田 紘一郎: "免疫学的排除機構からのエスケ-プ:寄生虫" 臨床免疫. 22. 180-187 (1990)
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[Publications] Yamaoka,K.,Fujita,K.et.al.: "Induction of CD23(FC ε RII) on human T cells by excretory and secretory antigen of Dirofilaria immitis" Int.Arch.Allergy Appl.Immnol.(1991)
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[Publications] 藤田 紘一郎(分担): "今日の治療指針(Vol.33)" 医学書院, 1242 (1991)