1989 Fiscal Year Annual Research Report
肝癌におけるキラ-T細胞に対する腫瘍特異的標的抗原の分子生物学的研究
Project/Area Number |
01480222
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井廻 道夫 東京大学, 医学部(病), 講師 (70134228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
郡司 俊秋 東京大学, 医学部(病), 医員
中釜 斉 東京大学, 医学部(病), 医員
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Keywords | 肝癌 / 細胞傷害性T細胞 / キラ-T細胞 / 腫瘍抗原 |
Research Abstract |
本年度は、健常者末梢血リンパ球より樹立された細胞傷害性T細胞株が認識する腫瘍特異的標的抗原(ATM-1)の遺伝子クロ-ニングを行い。その肝癌組織における発現、肝細胞の癌化に伴う発現のon-offのメカニズムを明らかにすると共に、抗ATM-1の抗体の肝癌診断、治療への応用を検討するものである。当初ヒト肝癌細胞株の培養上清よりATM-1の精製を試みたが、培養上清中のATM-1量が非常に少ないことが判明し、ATM-1含量の多い肝癌患者血清より精製することに変更した。患者血清をゲル濾過したところ、分子量約70〜120万の分画にEIAにてATM-1活性が認められた。ATM-1活性のある分画を集め、抗ATM-1モノクロ-ナル抗体-セファロ-スビ-ズと反応させ、ATM-1を抗体に結合させ、よく洗浄後2Mグアニジンチオシアネ-トにより結合蛋白を溶出した。精製された蛋白を還元下にSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動したところ分子量3万と8万の位置に強い蛋白バンド、5万の位置に弱い蛋白バンドが認められた。これら蛋白のN端アミノ酸配列を分析したところ、分子量3万、8万、5万の蛋白は、それぞれIgMのκ鎖、μ鎖、αアンチトリプシンに相当することが判明し、免疫学的にも確認された。これは精製に使用したモノクロ-ナル抗体が認識するエピソ-ドがこれら蛋白分子にも存在することによることが考えられる。最近、ATM-1と抗体する結合は低イオン濃度では安定であるが、高イオン濃度では解離することが判明し、ATM-1と結合した抗体セファロ-スを高塩濃度で洗浄したため、ATM-1が失われた可能性が高く、再度ATM-1の精製を行っている。抗ATM-1抗体によりATM-1抗原の組織中における存在を免疫組織学的に検索したところ、ATM-1は肝癌組織に強く発現していること。また、正常肝組織にも少量存在することが判明した。
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[Publications] 吉成河法吏: "Characterization of a tumor-associated target antigen,ATM-1,for a human T-cell clone by a murine monoclonal antibody,NM17" Cancer Researcn.
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[Publications] 中釜斉: "ヒトキラ-T細胞株が認識する腫瘍特異的標的抗原ATMI-17のヒト肝癌患者血清中および肝癌組織内における発現の検討とその物性解析" 日本消化器病学会雑誌.