1991 Fiscal Year Annual Research Report
肝癌におけるキラ-T細胞に対する腫瘍特異的標的抗原の分子生物学的研究
Project/Area Number |
01480222
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
井廻 道夫 東京大学, 医学部(病), 助教授 (70134228)
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Keywords | 肝癌 / キラ-T細胞 / 腫瘍抗原 |
Research Abstract |
私達は、健常者末梢血リンパ球より樹立された細胞障害性T細胞株5B5の認識する腫瘍特異的抗原を(ATMー1)のN端のアミノ酸配列を決定するため、肝癌患者血清よりATMー1の精製を試みた。患者血清をセファロ-スCLー6Bカラムによりゲル濾過を行い、各分画のATMー1濃度を測定したところ、分子量約90万の分画にATMー1活性が認められた。ATMー1を含む分画を合わせ、濃縮後、抗ATMー1(N1977)抗体ーセファロ-スとインキュベ-トレ、ATMー1を抗体に結合させた後、酸性溶液でATMー1を抗体より解離させ溶出させた。溶出した分画にはATMー1活性を証明することはできなかったが、ATMー1分画と抗ATMー1抗体ーセファロ-スをインキュベ-トした後の上清には、ATMー1活性は認められず、ATMー1は抗体カラムに吸着されたと考えられることより、ATMー1活性は抗体カラムからの溶出条件で失われたものと考えられた。健常者血清も同様な手順により蛋白の溶出を行った。溶出した蛋白はSDSーポリアクリルアミト電気泳動を行い、フィルタ-にトランスファ-後、蛋白染色を行った。健常者血清からも蛋白が溶出されたため、健常者血清から精製された蛋白を対照としてSDSーポリアクリルアミド電気泳動を行ったところ、分子量約5.5万の位置に健常者血清では認められない蛋白バンドが認められ、この蛋白のN端のアミノ酸配列の解析を行った。アミノ酸配列の解析の結果、解析した蛋白バンドは約2種類の蛋白よりなることが判明した。コンピュ-タ-によるホモロジ-検索の結果、蛋白1のN端の配列は免疫グロブリン重鎖可変領域IIIに一致したが、蛋白2のアミノ酸配列のホモロジ-を有する蛋白は見当たらなかった。今後、蛋白2のアミノ酸配列に基づいた合成ペプチドに対する抗体を作製し、あるいはオリゴマ-を作製し、ATMー1遺伝子のクロ-ニングを行う。
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