1990 Fiscal Year Annual Research Report
アルコ-ル性肝障害における血清糖蛋白異常の病因論的意義
Project/Area Number |
01480231
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
高田 昭 金沢医科大学, 医学部, 教授 (30064497)
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Keywords | アルコ-ル性肝障害 / 病因論 / 発生機序 / 糖蛋白 / 微小変異 / トランフフェリン / 等電点電気泳動 / シア-ル酸 |
Research Abstract |
<1.アルコ-ル(AL)性肝障害患者血清における糖蛋白微小変異の解析:>___ー血清transferrinの微小変異(DeーTf)を検出する簡便な方法を開発し、多数例についてその出現状況を分析した。Albumin除去後の血清を、狭いpH範囲で等電点電気泳動を行うと、DeーTfを容易に検出できたが、AL性肝障害80例では73%にDeーTfが陽性であり、陽性例は肝病変の進んだ例に多かった。一方、肝障害のない大酒家では陽性例はなかった。このように、DeーTfは大酒家のマ-カ-でなく、AL性肝障害を特異的に反映する異常と考えられた。非AL性肝障害患者80例では非代償性肝硬変でのみ陽性であった。Westernーblottingで分析すると、Tfのほかに、α_1ーantitrypsinでも明かな変異がみられた。血清をsialidaseで処理すると、正常者とAL性肝障害患者での電気泳動像はまったく同じで、微小変異はシア-ル酸の変異に由来しることが明かとなった。DeーTfに対する特異抗体は目下作成中であるが、簡便な検出法の開発で、その必要性は低くなった。<2.AL性肝障害と糖蛋白微小変異の関係:>___ー上述のごとく、DeーTfの出現はAL性肝障害を特異的に反映していることが明瞭になり、AL性肝障害ではTfはGolgi装置に蓄積していることが明かになっているので、肝の免疫電顕的分析は追加して行わなかった。<3.糖蛋白微小変異の出現機序の解析:>___ー ^<35>Sーmethioninのpulseーchaseーchase labelling法で糖蛋白のkineticsを分析すると、Tfの分泌障害はその成熟の遅延によっていると推定された。<4.肝内糖蛋白の蓄積機序の解明:>___ーC^<14>標識asialoーTfの作成がきわめて困難であったので、別の面から検討した。非代償性肝硬変でのTfの微小変異のパタ-ンはAL性肝障害でのそれとは明かに異なり、sialidase処理によっても、異なったままであった。このことは、AL性肝障害でのTfの異常はその分泌障害によるもので、asialoproteinのreceptorの減少によるものではないことを示していると考えられた。
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[Publications] 高田 昭: "アルコ-ル性肝障害における肝分泌性糖蛋白異常の病因論的意義." 病態生理. 9. 915-920 (1990)
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[Publications] 高田 昭: "わが国におけるアルコ-ル性肝障害の病態" 日本消化器病学会雑誌. 88. (1991)
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[Publications] 王 健松: "アルコ-ル性肝障害の生化学マ-カ-の分析ー特に血清transferrinの微小変異の意義について." アルコ-ル代謝と肝.