Research Abstract |
前年度までの研究により,神経芽腫においては,Pー糖蛋白の腫瘍細胞における発現は,薬剤耐性を示すものとは考えにくく,むしろより高い分化を示す指標となると考えられた.そこで今年度は,さらにそのほかの小児固形悪性腫瘍におけるPー糖蛋白の発現と予後,化学療法との関係を検討した. この結果,ウイルムス腫瘍,悪性奇形腫,横紋筋肉腫などの一部の小児固形悪性腫瘍において,Pー糖蛋白の発現が確認された.しかしこれらの腫瘍は,それぞれの症例数が少ないため,神経芽腫におけるような,予後,年齢との相関は認められなかった.しかし少なくとも,Pー糖蛋白の発現が,化学療法に対する耐性や不良な予後と関連しているという結果は得られず,神経芽腫におけるのと同様に,実際の薬剤耐性とは関連していないのではないかと考えられる. さらにヌ-ドマウスにおける化学療法剤の有効性の検討の基礎的実験として,臨床例と,化学療法剤の有効性の検定実験における,ヌ-ドマウスとの,化学療法剤の血中濃度の比較を行った.この結果,シスプラチンにおいては,臨床例における血中濃度と,ヌ-ドマウスにおける血中濃度は,大きな差がなく,妥当な投与量と考えられた.しかし,アドリアマイシンにおいては,最高血中濃度も,その減衰パタ-ンも全く異なっており,現在のヌ-ドマウスにおける投与量では,臨床例における有効性は検定できないのではないかと考えられる.そこで,さらに他の化学療法剤について,同様な検討を行うと共に,ヌ-ドマウスにおいて,臨床例と同様な血中濃度の得られる,アドリアマイシンの投与量・投与法を得るための実験を続けている.
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