1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01480328
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
田代 征記 熊本大学, 医学部, 助教授 (30040249)
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Keywords | 肝移植 / 肝保存 / FK506 / SOD(Super Oxide Dismutase) |
Research Abstract |
肝保存の研究としては血中半減期の長い病巣指向性SOD誘導体(SMーSOD)および新しい免疫抑制剤であるFK506を用いて、阻血肝に対する保護効果があるかどうかを検討した。肝移植実験としては豚を用いて、われわれの所で考案した新しい肝移植術を検討した。 (方法)豚21頭を用いて,Eck瘻を作成した後,常温下に肝門部で肝流入血行を遮断した。阻血時間を150分,180分として,SMーSOD投与,FK506投与の有無により6群に分けた。再潅流後経時的に胆汁量,胆汁中MDA,BSP血中消失率,胆汁中排出率,生存率を検討した。また豚36頭を用い18回の同所性肝移植実験を行った。門脈脱血法により2通りに分け,脱血用カニュ-レを脾静脈分枝からcanulationした従来法,ドナ-下大静脈片を門脈本幹に端側吻合して同部からcanulationしたグラフト法とし,従来法を8例,グラフト法を10例に行った。 (結果)Eck瘻作成下の豚常温下阻血では150分までは全例生存し,安全域と考えられた。SMーSOD投与群でも180分阻血ではBSP血中消失率には差がみられたが,他に差がなく,生存も5頭中1頭だけであった。FK506では180分でも,更に検討する必要があるが,現在のところ良好な成績が得られている。長時間の温阻血障害モデルでは再循環時に発生する活性酵素毒性よりも虚血時の肝代謝不全などの病態の方が増悪因子として強く作用していると考えられ,これに対してはFK506が有効な保護効果を有するものと考えられた。肝移植実験では肝移植後2日以上生存率は従来法では8例中2例,25%であったのに対し、グラフト法では10例中7例,70%であった。VーV bypassの門脈脱血にドナ-静脈片を使用したグラフト法は手技的にカニスレィションを容易にし,無肝期の循環動態の安定化と生存率の改善をみとめ,有用な術式であった。現在移植後5〜7日目に必発する胃潰瘍に対する対策を検討中である。
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[Publications] 沢田 俊彦(共著): "ブタ同所性肝移植術ーVーV bypassの門脈の流出路にドナ-下大静脈片を使用する新術式" 今日の移植. (1991)
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[Publications] 川元 俊二(共著): "虚血ー再循環時における肝類洞内皮細胞障害機構の解析" 今日の移植. (1991)
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[Publications] 辻 龍也(共著): "ドナ-脾細胞の門脈内投与による同種移植腎の生着延長効果ーとくに移植当日投与の効果についてー" 今日の移植. (1991)