1990 Fiscal Year Annual Research Report
実験的脊髄損傷後の脊髄の血流量及び神経伝導物質の変化に関する研究
Project/Area Number |
01480372
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
酒匂 崇 鹿児島大学, 医学部, 教授 (10041295)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 明敏 鹿児島大学, 医学部, 助手 (90219329)
米 和徳 鹿児島大学, 医学部附属病院, 講師 (40182844)
|
Keywords | 実験的脊髄損傷 / 脊髄血流量 / 脊髄浮腫 / 脊髄内血管透過性 / カテコ-ルアミン / レ-ザ-ドップラ-血流計 |
Research Abstract |
家兎を用いた約2週間で両下肢の運動麻痺の回復する急性脊髄損傷モデルにて,1)脊髄浮腫,2)脊髄内血管透過性の定量的変化,3)脊髄内カテコ-ルアミンの定量的変化の観察を経時的に行い,以下の結果を得た。1)脊髄浮腫の観察;乾燥重量法を用いて損傷24時間後までの脊髄内水分含有量を測定した。損傷1〜24時間後の損傷部位の脊髄水分含有量は,70.5±0.2〜70.8±0.6%であった。一方,非損傷部位の脊髄水分含有量は,68.2±0.3%であった。脊髄損傷部位では非損傷部位に比し,損傷24時間後まで有意に脊髄水分含有量の増加を認めた。すなわち,損傷24時間後まで損傷脊髄の浮腫の継続することが示唆された。2)脊髄内血管透過性の定量的変化の観察;螢光性物質であるFDー70Sを静脈内投与し,一定時間後にその脊髄組織内濃度を測定し,脊髄内血管透過性を指標とした。本法は脊髄内血管透過性の定量化という新しい試みである。その結果、損傷1〜24時間後の非損傷部位のFDー70Sの脊髄内濃度は,2.32±0.27〜2.45±0.30μg/gであった。一方,損傷部位のFDー70Sの脊髄組織内濃度は損傷1〜24時間後には,4.77±0.78〜2.7±0.25μg/gであり,損傷早期の損傷部位のFDー70Sの脊髄組織内濃度は有意に高かった。すなわち,損傷早期の損傷脊髄内血管透過性の亢進が示唆された。3)脊髄内カテコ-ルアミンの定量的変化の観察;損傷1〜24時間後の損傷脊髄部位のカテコ-ルアミン(NE,DA,5ーHT)の定量的変化をみると,NE,5ーHTの経時的な有意な低下を認めたが,DAの有意な経時的変化を認めなかった。以上の結果より,損傷脊髄内微細循環動態およびカテコ-ルアミンの変化が把握できた。今後,近年注目されている興奮性アミノ酸の二次的脊髄損傷およびカテコ-ルアミンとの関連についてレ-ザ-ドップラ-血流計を用いた脊髄血流量の測定も含めて実験を進める。
|
-
[Publications] 吉野 伸司: "損傷脊髄における生体アミンの変化に対する興奮性アミノ酸の関与" 日本整形外科学会雑誌. 64. 1109 (1990)
-
[Publications] 簗瀬 光宏: "実験的脊髄損傷における興奮性アミノ酸の役割" 中部日本整形外科災害外科学会雑誌. 33. 2015-2017 (1990)
-
[Publications] 簗瀬 光宏: "Role of Excitatory Amino Acid Receptor(NMDA)in Experimental Acute Spinal Cord Injury" 日米加整形外科基礎学会合同会議.