1990 Fiscal Year Annual Research Report
前庭性誘発電位の頭皮上記録と発生起源に関する実験的研究
Project/Area Number |
01480409
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上村 卓也 九州大学, 医学部, 教授 (00075201)
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Keywords | 誘発電位 / 回転刺激 / 前庭神経路 / モルモット / 単一ニュ-ロン応答 / 迷路破壊 |
Research Abstract |
本年度はまず,昨年度作製した回転角加速度刺激装置を用いて、種々の速度の準振子様運動をモルモットに与え、前庭神経核内よりガラス電極を用いてフィ-ルドポテンシャルを記録した。頭部を外側半規管が回転面と一致するよう固定し、8秒周期で50゚/S^2,30゚/S^2,15°/S^2の角加速度刺激を加えたところ,いずれの場合も陽性ー陰性ー陽性波(P_1ーN_1ーP_2波)が記録できた。振幅は50゚/S^2で最大であったので以後の実験ではこのパラメ-タを用いることとした。前庭神経核内外でのフィ-ルドポテンシャルは、外側核、上核内ではP_1ーN_1ーP_2波であり、ピ-ク潜時は各々1.7秒,4.3秒,5.6秒であった。神経核外近傍でも同様の波形が記録できたが、その振幅は核内のそれより小さかった。小脳内ではP_1波のみでN_1ーP_2波は記録できなかった。このことよりN_1ーP_2波の起源は前庭神経核を中心とした脳幹部にあることが推定された。前庭神経核より単一ニュ-ロンの活動を記録したが、同側回転時に発火するI型ニュ-ロンの興奮のピ-クは、フィ-ルドポテンシャルのN_1波のピ-ク潜時とほぼ一致した。このことは前庭神経ニュ-ロンの活動がN_1波の起源と深く関わっていることを示唆する。次に、前庭神経核内で記録されるP_1ーN_1ーP_2波が両側および一側迷路破壊によってどのように変化するかを調べた。両側破壊後には回転刺激を加えても平坦な波形しか記録できず、このP_1ーN_1ーP_2波の起源は前庭由来であると考えた。一側破壊例では、その振幅は減少したがP_1ーN_1ーP_2波を記録することができた。次に、銀ボ-ル電極を用いて脳表面より誘発電位を導出した。小脳表面および頭頂部大脳表面からは、脳幹部内よりガラス電極を用いて導出できたP_1ーN_1ーP_2波と類似した波形を記録でき、かつ、この誘発電位は両側迷路破壊で完全に消失した。以上の実験結果より、前庭中枢路の神経活動を脳表面より導出することは可能であるといえる。今後、前庭性誘発電位の臨床応用に向けてさらに検討する予定である。
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