1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01510019
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Research Institution | Hokkaido Musashi Women's Junior College |
Principal Investigator |
八力 広喜 北海道武蔵女子短期大学, 教授 (30091010)
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Keywords | 『十住毘婆沙論』 / 『迦葉品』 / 般若経 / 『宝月童子所問経』 / 『菩提資糧論』 / 『般舟三味経』 / 聞名 / 称名 |
Research Abstract |
別刷の研究成果報生書「『十住昆婆沙論』の研究ー引用経論を中心としてー」(別に提出)に掲載したように、『十住昆婆沙論』(以下『論』と省略)における『迦葉品』の引用、船若経の引用、『宝月童子所問経』の引用について検討してきた。さらに学会誌において(『印度学仏教学研究』第40巻、第2号掲載予定)『菩提資糧論』の引用について公表することになっている。以上の研究は、ほぼ予定通りに進行していると言ってさしつかえないが、当初予定の原始仏教経典の引用については、本年度日本印度学仏教学会(愛知学院開催)において発表する予定である。 現在までに得られた新らたな知見としては、第一に『迦葉品』というきわめて古い、初期大乗経典の引用が見られ、そこに盛り込まれている大乗仏教の思想が、『論』形成に深くかかわっていること。諸瀑訳との比較においては、秦訳との類似性がみられること。第二に「船若経」について『論』引用の「船若経」では大品系、小品系のどちらの所属の経典であるか確定しえないこと。また『論』の引用部分だけでは経典の趣盲が解読不能であり、現存のテキストの援けをかりて読む必要のあること。第三に、『宝月童子所問経』の引用については、『論』は初期浄土思想の形態を残していることが、この経の引用から明確となる。それは聞名、称名、など後に重要な概念となるこれらの思想が、やや不整理のままで言及されていること。このことはこの経のチベット訳が、「名号受持」「執持名号」「懴悔」「随喜」など、サンスクリット本より(予想される)整理された形態を示していることから明白である。 他に『般舟三味経』の引用も検討したが(『印度哲学仏教学』第6号掲載予定)ここでも『論』は三味経典の影響を深くうけて成立していることが判明している。『論』の重要性がますます強調されるのである。
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Research Products
(2 results)