1989 Fiscal Year Annual Research Report
幾何学的錯視に及ぼす多様な呈示条件の効果に関する研究
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01510058
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
後藤 倬男 名古屋大学, 文学部, 教授 (40022355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大屋 和夫 名古屋大学, 文学部, 助手 (70109239)
甲村 和三 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (40022371)
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Keywords | 幾何学的錯視 / 多様な呈示条件の効果 / 錯視自体の高速振動 / ブックレット / 錯視への調整要因 |
Research Abstract |
本研究は、幾何学的錯視に及ぼす多様な呈示条件の効果に関して、錯視図形自体に操作を加えることを目的として、(1)実権室的な「個別実験」と、(2)調査的な「集団実験」によって検討を行なったものである。 まず、(1)個別実験においては、昨年度の科学研究費で備えられたプロジェクタ-によって投映される、多様な錯視図形を垂直・水平・斜めの3方向に振動させ、その振動頻度を変化させて各錯視の特徴的な見えを調べた。その結果、すべての錯視で錯視量の明瞭な変化(減少)が認められ、とくに、交差線分を主要な刺激条件とする錯視(ヘリング・ヴントなど)では、錯視量が消失していた。これは、錯視自体の高速振動の効果として、錯視発生への抑制を確かめたものであり、学会発表(日本心理学会第53回大会)においても反響を得ることができた。これらの結果は、その後の展開を含めて、欧文論文へのまとめが進行中である。 つぎに、(2)集団実験においては、様々な説明が試みられている代表的な錯視として、「エビングハウス錯視」をとりあげ、多様な刺激布置条件を含む錯視図形を小冊子(ブックレット)に印刷して、自由度の大きな呈示場面での、多数の観察者の多数回の反復観察の傾向を検討した。この実験には、本科学研究費で導入したプリンタ-が、実験の遂行および結果の整理に有用であった。この実験においても、各被験者の反応には2種類の特異な傾向が認められ、この錯視の新しい側面を見出すことができた。得られた結果の一部は、邦文論文にまとめられており、また欧文論文を計画している。 以上の両実験は、幾何学的錯視の成立に影響を及ぼしている諸要因の一側面(錯視への「調整要因」と名付けられた)を明瞭に捉えており、この点に関する一連の研究の成果は、現在、欧文論文として投稿中である。今後は、錯視への直接操作をさらに進展させていく予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 後藤倬男: "反復観察にもとづく大きさ錯視(Size illusions)の刺激条件に関する実験的研究" 名古屋大学文学部研究論集. 哲学36. (1990)
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[Publications] 大屋和夫: "ブックレット法による錯視の分析-モデル構成を目指して(そのI)-" 名古屋大学文学部研究論集. 哲学36. (1990)
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[Publications] Takuo Goto,et al.(他6名): "Expermental study on geometrical illusions presented under special environment(1)" Psychologia.