1989 Fiscal Year Annual Research Report
1942〜1945年にわたる米国強制収容所における日系人の社会心理-収容所所内新聞の分析を素材として-
Project/Area Number |
01510067
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
林 春男 広島大学, 総合科学部, 助教授 (20164949)
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Keywords | エスニック・アイデンティティ / アイデンティティ / ステレオタイプ / 社会的カテゴリ- / JAPANESE AMERICAN |
Research Abstract |
本年度は、ユタ州デルタ付近に建設された連邦政府戦時転住局トパ-ズ転住所における日系人の強制収容所体験を、転住所内で刊行された所内新聞の系統的な分析を通して検討した。所内新聞には、日系二世を対象として英語で刊行された“TOPAZ TIMES"と、日系一世を対象として日本語で刊行された「トパ-ズ新聞」の2種類がある。「トパ-ズ新聞」については長江(1987)によって一部紹介されているのであり、その全貌についてはこれまで系統だって分析されたことがなかった資料である。本年度は、刊行された所内新聞全体の3分の2以上の分量を占める英語版新聞“TOPAZ TIMES"について、記事のデ-タベ-ス化を完了した。“TOPAZ TIMES"は1942年9月17日から1945年8月31日にわたるほぼ3年間に414号、リ-ガルサイズ用紙で1674ペ-ジの分量が刊行された。掲載された全記事について、(1)記事ID番号、(2)刊行期日(年月日)、(3)所蔵巻号頁、(4)記事見出し(全文)、(5)記事、分類、をマイクロコンピュ-タ上にデ-タベ-ス化した。登録された記事総数は11377件に及んだ。 コロラド州グラナタ転住所で刊行された“GRANADA PIONEER"の内容分析を通して日系二世における“Japanese Amereican"というエスニック・アイデンティティの成立過程を分析した林(1987)の知見の外部妥当性を調べるために、本年度作成した“TOPAZ TIMES"デ-タベ-スをもとに、各号の一面トップ記事の内容分析を行った。その結果、(1)収容期間の後半に“Japanese American"というアイデンティティへの言及が増加した、(2)連邦政府による他者規定が先行し、日系二世自身による自己規定へとつながった、(3)当時の日系二世とって“Japanese American"というアイデンティティは連邦政府やアメリカ大衆に対する政治的なアイデンティティとして成立した、ことが明らかにでき、林(1987)の知見の妥当性が確認できた。この成果を第22回国際応用心理学会で発表する
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