1990 Fiscal Year Annual Research Report
1942ー1945年にわたる米国強制収容所における日系人の社会心理
Project/Area Number |
01510067
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
林 春男 広島大学, 総合科学部, 助教授 (20164949)
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Keywords | 日系アメリカ人 / アイデンティティ / 出生率 / 死亡率 / ストレス / ポワソン分布 / 強制収容所 / 移民 |
Research Abstract |
本年度は、ユタ州トパ-ズ収容所で刊行された「トパ-ズ・タイムズ」の全記事索引のデ-タベ-ス化を完成させた。記事総数は約25,000件であり、内訳は日系二世を対象とした英語版で約16,000件、日系一世を対象とした日本語版で約9,000件となった。このデ-タベ-スをもとに、本年度は以下のことが明らかにできた。 (1)日系人のアイデンティティについての分析 英語版の分析では、第1面トップ記事、論説記事、投書の各記事において、収容時期が長引くにほど、"Japanese American"という社会的カテゴリ-の使用頻度が、連邦政府と日系人との関連のなかで増加した。このことは、"Japanese American"という社会的アイデンティティの確立の過程を示すと考えられた。 日本語版についての同様な分析においては、「日系人」という社会的カテゴリ-の使用が増加した。記事内容をもとに英語版との対照させた結果、"Japanese American"というカテゴリ-の翻訳語として「日系人」が一部には用いられていたが、大部分は一世独自の社会的アイデンティティであることが示された。 (2)収容生活のストレス強度と誕生数・死亡数の関連の分析 3年半にわたった強制収容の間にトパ-ズ収容所では390名の誕生・125名の死亡(戦死を除く)が記録された。誕生・死亡とも分布型はポワソン分布を示した。週単位での誕生死亡間数と当時の日系人社会に影響した重要な出来事の関連を分析した。誕生については、強制立ち退きからタンフォラン仮収容所を出て、トパ-ズ収容所へ移住するまでの間受胎が少なかった。逆に、日系兵士の徴兵が復活した1944年に受胎数が増加していた。また、若者の多くが出所した1945年での受胎数が減少している。死亡については、強制立ち退きから最初の6ヵ月の死亡率はきわめて低かった。逆に、収容所の閉鎖が公表され、一世の多くが将来に不安を感じていた時期に死亡率が増加している。
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[Publications] HARUO.HAYASHI: "THE IDENTITY OF "JAPANESE AMERICANS" DURING WWII" The Abstracts for 22nd International Congress of Applied Psychology. 400 (1990)
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[Publications] 林 春男: "“JAPANESEーAMERICAN"の成立ー「トパ-ズ・タイムズの分析ー" 第31回日本社会心理学会大会論文集. 79-80 (1990)
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[Publications] 林 春男: "トパ-ズ収容所における最初の1年間ー所内新聞を通してみる日系人の生活ー" 広島大学総合科学部紀要III. 14. 68-77 (1990)
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[Publications] 林 春男(監修・解説): "日系人強制収容所新聞「トパ-ズタイムズ」(全10巻・別巻)" 日本図書センタ-, 3400 (1990)