1991 Fiscal Year Annual Research Report
旋律認知の基礎となる音の高さの動的知覚のメカニズム
Project/Area Number |
01510069
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Research Institution | Kyushu Institute of Design |
Principal Investigator |
津村 尚志 九州芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (20038962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 祥好 九州芸術工科大学, 芸術工学部, 助教授 (90127267)
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Keywords | 音の高さ / 複合音 / 共通運命の要因 / 認知閾 / 母音知覚 / 旋律 |
Research Abstract |
いくつかのスペクトル成分が、一斉に、同じ方向に、同じ程度の距離だけ動いたときに、全体としての、音の高さの上昇感、下降感が得られるとの、これまでに得た考え方を確かめるために、二つの予備実験と、二つの本実験とを行った。(うち一つは昨年度から継続している。)。例えば、いくつかの成分音が一斉に、0.5秒程度の時間をかけて、数百セントくらい上昇するような状況を考える。このとき、全体としての音の高さの上昇が知覚される。この知覚現象自体、これまでに得た考え方を支持するものであるが、ここでは、この複合音を「背景音」と名付け、これに、マスキングの実験におけるマスク音のような役割を与える。背景音と重ねて、それと同じ方向、あるいは反対の方向に動く、日本語母音、純音などの「信号音」を呈示し、信号音の動きの方向が、その知覚されやすさに影響するかどうかを調べた。このさい、成分音の動きの効果のみを分離して取り出すために、背景音、母音のいずれも、調波構造が生じないような非日常的な複合音とする。また、背景音のスペクトルは充分広い周波数範囲にわたっている。信号音のレベルを変化させることによって、信号音の認知閾を測定したとこめ、母音、純音のいずれにおいても、信号音と背景音とが逆の方向に動いたときのほうが、信号音が認知されやすいとの結果が得られた。信号音の動きの方向によって生じた認知閾の差異は、4db程度であった。これまでの研究で、ゲシタルト心理学の概念である「共通運命の原理」に注目し、多くの成分音が一斉に、同じ方向に、同程度の速度で動くときに、全体としての、音の高さの上昇感、下降感が生ずるとの考え方を提唱した。今年度の実験においては、背景音と信号音とが同じ方向に動いた場合、共通運命の原理に従って、両者が融合ないし一体化してしまい、信号音のみを抜きだして聴き取ることが困難になったと解釈することができる。
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