1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01510077
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
山上 精次 専修大学, 文学部, 教授 (40111439)
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Keywords | 眼球運動 / 発達 / 幼児 / 滑動性追跡眼球運動 / サッケ-ド |
Research Abstract |
近年、発達初期の視覚情報処理能力に関して多くの実験が実施され、重要な知見が蓄積されるようになってきている。しかし発達初期の眼球運動を解明することを直接的な目的とする研究は数少ない。本研究は、3歳から5歳までの幼稚園児を対象として、運動する視標に対する追跡眼球運動の発達、静止した幾何学的刺激に対するスキャンパスを検討することを目的として企図された。 被験者は私立大学付属幼稚園に通園する健常な幼稚園児を各年齢ごとに5名づつとした。幼児を被験児とした従来の研究の多くが、眼球運動の測定に成功しなかったのは、幼児の動機づけを充分に高めることができなかったことに起因すると考え、本研究では、視標提示装置を改良工夫して、視標を従来の単純な円形の白色単一光の光点だけでなく、種々の多様なパタ-ン(例えばアニメの登場キャラクタなど)を提示できるようにした。幼児の注意を惹起する力の強いこうした刺激を用いることで、これまでにない非常に良い眼球運動記録を収集することができた。デ-タは大量で多岐にわたっているため、現在のところ解析が終了したのはごく一部であるが、これまでの解析の結果、次の様な知見が得られている。すなわち、(1)3歳から5歳にいたる3年間に眼球運動はその定性的側面、定量的側面で加齢に応じて着実に発達する。(2)具体的には、滑動的追跡眼球運動の視標と眼球運動の間の位相遅れの改善、(3)矩形波運動をするタ-ゲットに対するサッケ-ド潜時の短縮などである。また(4)対照とした成人のデ-タではパタ-ンを持つ刺激の提示によると、従来認められていた視標に対する眼球運動の先回り現象が消失するという興味深い知見も得られており、これらの点のより詳細な分析にとりかかっている。なお網膜像の直視法については種々の技術的困難があって、ようやく予備的な検討が緒についたばかりのところである。
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[Publications] 山上精次: "サッケ-ドと追跡眼球運動の初期発達について" 基礎心理学研究. 7. 71-83 (1988)
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[Publications] 山上精次(共著): "「適応行動の基礎過程」(人間の初期学習)第1章" 培風館, 292 (1989)