1989 Fiscal Year Annual Research Report
現代社会の変容と「現代のイメ-ジ」に関する研究-消費社会変容と若者分化の現在-
Project/Area Number |
01510120
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
松島 浄 明治学院大学, 社会学部, 教授 (10062176)
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Keywords | 物語の変容 / 大きな物語批判 / 断片化したイメ-ジ / 分裂病 / パスティツシュ / 意味の喪失 / 時間的連続性の破壊 / 言語ゲ-ムの異型性 |
Research Abstract |
現代社会の変容を文化の変容として考察する時にまず考えられるのは、(1)「物語の変容」という概念であり、(2)「断片化したイメ-ジ」の表現という考え方である。こうした考え方は、すでに1986年に発表した「イメ-ジとしての現在」という論文において考察されていた。つまり既成の近代文化の解体の中から、それらのイメ-ジの断片をいかに縮合しつつ新たな表現を獲得していくかがこれからの文化の課題だということである。はじめの「物語論」の文脈は、リオタ-ルの「ポストモダン論」における「大きな物語」批判の思想と交錯するし、後者の「断片化したイメ-ジ」の理論は、ジェ-ムソンの「ポストモダニズムと消費社会」という論文の中の「分裂病」と「パスティッシュ」という概念に発展できると考えられる。ジェ-ムソンは「シニフィエを失ったシニフィアンは、ひとつのイメ-ジへと変容される」と言って、意味の喪失や時間的連続性の破壊が、物語の変容とともに、断片化したイメ-ジの氾濫を現代の表現分化の中に導き出している原因だと考えている。 以上のような方法論をふまえ、私達は、「表現分化のなかに見る現在のイメ-ジ」の具体的分析を、山川直人監督の『ビリィザキッドの新しい夜明け』(1986年)という映画作品の中に見い出した。つまりスロ-タ-ハウスと呼ばれる店のワンセットドラマの中に、特異なキャラクタ-の持主を登場させながら、その異質な時間(歴史)と空間(社会)を超越したもう一つのドラマをつくり出したのである。そこでは登場人物の原イメ-ジをパロディックに解体しつつ、しかもリアリティを持たせて現在のドラマが展開していくのである。この自閉的な空間の中に、言語ゲ-ムの異型性を担った人物達の分裂的に錯綜する舞台(ドラマ)が創出されたのである。
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Research Products
(1 results)