1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01510194
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
芳井 研一 新潟大学, 人文学部, 助教授 (90092634)
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Keywords | 軍縮 / 軍拡 / 平和論 / 東亜新秩序 / 大東亜共栄圏論 / 南進論 / ファシズム |
Research Abstract |
前年度に引き続き,1920年代の軍縮論の動向を『第三帝国』や『新社会』,『我等』など諸雑誌の論稿を複写・整理しながら検討した。また『中外』の編集責任者である内藤民治の関連資料を収集し,自由主義的平和論の意味を検討しつつある。人道主義的平和論や社会主義的平和論を含め,従来考えられてきた以上に軍縮論をめぐる相互の思想的交流は深く,豊かな論議がなされているのを知ることができた。しかし文明観や国家観などを広く考察してゆくと,西欧世界への批判意識や弱肉強食の世界観が強く見られるのであり,この点をさらに文学者の動向にまで広げてたどってみることとした。日本近代文学館で雑誌『文学界』の該当記事にあたるほか,武者小路実篤などの資料を収集し,なお検討中である。 つぎに軍拡論については,これも防衛庁戦史部図書室等で引き続き第一次資料の収集につとめた。ただ枠組みを軍部等政策決定グループに置くのみでは問題の構造が浮かび上がってこず,むしろ東アジアの国際環境に視野を広げることが不可欠と考えられた。そこでイギリス国立公文書館でイギリスの極東政策についての第一次資料を複写し,また国会図書館所蔵のJapan Correspondenceのマイクロフイルムを購入するなどにより検討を進めつつある。軍拡論は直接的にはパワーポリティックスの国際環境に根ざして生まれたものとされ,とくに人々は日本が近代世界に編入されて以来の宿命であると考えがちであった。このような歴史的制約と八紘一宇のような天皇制イデオロギーが独特に結びつき,日中全面戦争以降の政治過程を規定してゆくことになったと見ることが出来る。当時の国際環境への日本の反応が,東亜新秩序,日独伊三国同盟,大東亜共栄圏論,南進と制約されてゆく背景を,より広いパースペクティブで位置付ける必要がある。
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[Publications] Charles VERLINDEN: "17^eCONGRE^^'S INTERNATIONL DES SCIENCES HISTORIQUES" COMITE^^' INTERNATIONL DESSCIENCES HISTORIQUES, 373 (1990)
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[Publications] 芳井 研一: "日本議会史録 第3巻" 第一法規, 469 (1991)