1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01510223
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
高橋 継男 東洋大学, 文学部, 助教授 (50125598)
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Keywords | 新唐書食貨志 / 典拠史料 / 参考史料 |
Research Abstract |
本年度は、当初の計画に従って前年度に引き続き、『新唐書食貨志』(以下、『新食貨志』と略称)全5巻の第3巻及び第4巻中ばまでの記事を分析し、その大部分の記事の典拠史料や関連する参考史料を見出すことができた。その一端を示せば、著名な財政官僚劉晏による漕運法改革に関する第3巻の記事の一節の「‥‥分官吏,主丹楊湖,禁引漑。自是河漕不涸。」は、一見基づく史料が不明であるが、『全唐文』巻314李華「潤州丹楊県復練塘頌并序」と『嘉定鎮江志』巻6所収「劉晏状(永泰二年四月十九日)」によって,根拠のある記事であることが確認されるものの,『新食貨志』の上記の「丹楊湖」は「練湖」と記すべきことが判明した。また,従来不明であった同上巻の杜佑による漕運路改革の記事「‥‥杜佑以秦漢運路,出浚儀十里,入琵琶溝,絶蔡河,至陳州而合。云々」は、『資治通鑑』巻227建中三年十一月条の胡三省の注に引く「宋白日」(宋白撰『続通典』の佚文)の記事と一致し,これも信頼できる記述であることが明らかとなった。しかし、全体として未だ典拠史料の不明な記事も少なからず残っており、調査結果を公表するにま今後の更なる検討を必要としている。 なお,前年度の研究による第1巻後半部分の記事42条について,「新唐書食貨志記事の典拠史料覚書(三)」と題し,勤務校の紀要に発表した。これでは,42条の中,27条の記事の典拠史料を明にらかにし,残のり15条の記事については,関連する参考史料を掲出し得た。これによって,『新食貨志』の記事の意味が不鮮明なもの(たとえば、第84条「青苗銭畝加一倍,而地頭銭不在焉。」)や,誤記乃至作為的改作がなされている箇所(たとえば,第75条「乃詔,能賑貧乏者,寵以爵秩。」など)を指摘し,『新食貨志』が記す唐代社会経済史・財政史の真相を少なからず研明することができた。
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Research Products
(2 results)