1989 Fiscal Year Annual Research Report
第一次大戦前におけるイギリスの土地政策と土地財産の証券化に関する研究
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01510225
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
浜田 正行 弘前大学, 人文学部, 教授 (80094712)
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Keywords | イギリス大土地所有制の崩壊 / 土地貴族の株式・債券保有貴族への転身 / W・ハ-コ-トの相続税改正 / D.ロイド・ジョ-ジの「人民予算」 / 「1919年歳入法」 |
Research Abstract |
平成元年度においては、当初の研究計画どおり、土地政策史、財政政策史の基礎資料たる『イギリス議会史料』(Partiamentary Debates,5th series,House of Lords,vol.1〜43(1909-1920)、House of Commons,vol1〜143(1909-1921))を入手し、これを解読することによって多大な成果を得た。新たに得られた知見としては、イギリス土地貴族の株式・債券保有貴族への転身過程はつぎの如き三段階を経て遂行されたことか判明した。W・ハ-コ-ト(William Harcourt)の相続税改正(1894年)を契機とする第一段階(1894-1909年)、この段階では、19世紀末「農業大不況」に伴う地代と地価の低落、長期抵当貸付の縮小によって金融的・財政的苦悶に陥った負債のある土地貴族が土地売却を開始し、売得金をもって負債を清算したのちに、剰余金を内・外証券への投資に振り向け、土地貴族の株式・債券保有貴族への転身が開始した。第二段階(1909-1914年)はD.ロイド・ジョ-ジ(David Lloyd George)の「人民予算」の成立(1910年)に対応する。この段階では、負債の有無にかかわらず、全ての土地貴族が土地売却を開始し、売得金を内・外証券により一層大規模に投資し、土地貴族の株式・債券保有貴族への転身が本格的に進展した。「1919年歳入法」を契機とする第三段階(1919〜1921年)、上記「歳入法」によって相続税が土地貴族にとって最大の支出項目となり、相続税を支払うために、土地売却が決定的に進展し、かつ内外証券への投資も顕著に増大し、ついに、土地貴族の所得の四分の三以上が利子・配当収入によって占められるに至り、土地貴族の株式・債券保有貴族への転身が完了した。以上の研究成果は後掲の共著として1990年3月に公刊される予定である。
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Research Products
(1 results)