1989 Fiscal Year Annual Research Report
ヨ-ロッパキリスト教文化圏の形成過程における社会と宗教
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01510232
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
三浦 弘万 静岡大学, 教養部, 教授 (70042116)
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Keywords | ゲルマン諸神 / 聖森林・豊饒信仰 / フランク自由民共同体 / グラ-フ / ザクセン部族 / イルミンズ-ル / ザクセン部族法典 / ヴィドキント |
Research Abstract |
ヨ-ロッパキリスト教文化圏の形成過程について、まずフランク国家成立以前のゲルマン諸部族のもとで、スウェ-ビ-系諸部族は聖森林信仰でまとまった祭祀団体をなしていた。彼らの一部はイシス女神を穀物豊饒の農業神、家の炉の神として信仰した。レウディ-グニ部族を始めとする7部族は、一柱のネルススを母なる大地の豊饒女神とする祭祀団体をなした。これらが例示するように、聖林信仰と豊饒女神信仰が特徴的である。ネルススク部族のもとで、織物、車、祭司、奴隷など、日常生活と社会状態が推測される。7部族のなかのロイディンガ-部族は、その部族名が「森林のあいだの開墾した土地の人びと」を意味し、はやくから鉄製の斧と計量〓の発達によって開墾活動が可能となっていた。これらの点について、古典古代の諸文献、語源学的研究成果、考古学的研究から、最近の見知をまとめた。 次に、フランク社会の国家発展を彼らの自由民定住共同体とその成員、自由民定住共同体における奴隷、マンキピア、リ-トゥスとその解放、その家族形成、自由民定住共同体への王権の伸長、とりわけ村の近くに軍隊とともに滞在していたグラ-クが債権者から判沢の執行を請願され、債務者の家へ赴き、差し押えを行ない。平和金を取得し、やがて裁判権をも獲得して、自由民・王双方から専門職者として認められるに至る村の社会生活の組織化と王吏制の発達などの検討を通して考察した。 第三に、フランク国家の拡大とザクセン部族の編入過程について、ザクセンの祖神の聖所てあったイルミンズ-ルの破壊、異教徒に対する聖戦とキリスト教的支配の観念、オストファ-レン、エンゲルン地域の人びとの集団洗礼、ヴィドキントの降伏、彼の改宗、ザクセン自由民層の分裂、貴族層のフランク王権との提携などを『ザクセン諸地域に関する辞令』『ザクセン部族法典』依拠して、考察し、成果を得た。
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