1989 Fiscal Year Annual Research Report
文法的知識と談話的要因の相互関係に関する実証的研究
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01510276
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山梨 正明 京都大学, 教養学部, 助教授 (80107086)
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Keywords | 文脈情報 / 語用論 / 文法的知識 / 潜在文脈 / 遂行機能 / デフォ-ルト的推論 / アナロジ-的推論 / 首尾一貫性 |
Research Abstract |
日常言語のメカニズムを理解していくためには、文レベルの統語情報や文法構造を明確にしていくだけでなく、文をグロ-バルに特徴づける談話の情報構造や文脈情報の明確化が重要な役割をになう。これまでの言語学と関連分野の研究は、文の統語構造の規則性や形式的な制約の研究が中心になっており、文レベルを超える談話の内部構造の体系的な定式化や文脈情報を考慮に入れた文法と談話の相互関係の解明は本格的にはなされていない。本研究では、特に日本語と英語の照応現象と接続現象を比較検討しながら、文法と談話レベルの要因の相互関係を明らかにした。特に今年度の研究では、文の有機的な集合体としての談話の展開の論理を特徴づける、次のような問題の解明を図った:1.文と談話の語用論的機能を特徴づける要因(文の命題機能と遂行機能)、2.文の意味情報と談話の流れを特徴づける要因(連結性と首尾一貫性)、3.談話の背景を理解するための推論事象にかかわる要因(概念的推論、デフォ-ルト的推論、アナロジ-的推論)。1.で明らかにした要因は、文法的知識とその伝達モ-ドの相互関係、2.で明らかにした要因は、談話文脈における文相互のつながりの論理、3.で明らかにした要因は、談話の潜在文脈を特徴づける要因である。これらの要因は、我々が文法的知識に基づいて談話を作り上げていく際の背景となる言語運用能力の一部を構成する要因であり、日常言語による伝達行為の際に重要な役割をになうものである。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 山梨正明: "語用論" 『日本語と日本語教育』(明治書院). 11. 215-250 (1989)
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[Publications] 山梨正明: "談話・文脈・推論" 『談話理解モデルとその応用シンポジウム報告書』(情報処理学会). 1-12 (1989)
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[Publications] 山梨正明: "対話をめぐる言語環境:言葉のインタ-フェ-スとエコロジ-" 『言語とその環境シンポジウム論文集』(日本ソフトウェア科学会). 1-14 (1989)