1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01520002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
利谷 信義 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (40013015)
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Keywords | 陪審制度 / 参座制度 / 陪審判決 / 陪審法 |
Research Abstract |
(1)戦前の陪審制度の制度史的研究 これまで研究のおくれていた明治初年の参座制度の研究を進めたが,他の諸改革と同じく,岩倉使節の欧米巡回中の畄守政府の改革という性格がつよい。そのこともあって,岩倉使節の帰国によって瓦解した。もっとも,広沢参議事件についても用いられたことは,政権内部の事件を扱うのに適した制度と考えられていたことを示すであろう。いずれにしても,政権と司法との関係を当時の政治関係の脈絡の中でとらえなおしつつ,制度的特質を再検討する必要がある。 陪審法制定の起動力については諸説があるが,選挙弾圧事件などに対する弁護士の全国的な救援活動も無視できない。法曹公論によってそのあとづけをしたが,それと在野法曹の代表者による陪審法制定への寄与との間の関係を論証したい。 (2)戦前の陪審判決の収集と分析,統計的分析 系統的な収集は,判決の日を特定しなければ閲覧できないため困難である。これまで収集したものの分析によれば,有罪判決においても必ずしも検察官の求刑通りではなく,裁判官の独自の判断が確保されているように思われる。 陪審事件の統計的分析も,ミスプリントのためか数字の斉合性のない部分があって分析に困難を感じる。しかし,陪審事件と一般事件との無罪率の差が最近問題とされることなど,過去の制度の実績が問われることが多いので,その確定につとめている。年度的変化,とくにその減少傾向は著しいが,地域差,とくに大都市における多さは,母数,弁護士数,犯罪類型との相関関係によって分析される必要があり,目下それを実施している。
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Research Products
(1 results)