1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01530022
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
荒井 一博 一橋大学, 経済学部, 教授 (40134879)
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Keywords | 年齢別賃金格差 / 年功賃金 / 内部労働市場 / 終身雇用制 |
Research Abstract |
今年度の研究成果はきわめて豊富であった。まず研究発表の欄に示した『年齢別賃金格差の決定要因』や『わが国の製造業における年齢別賃金格差の推移』において、年齢別賃金格差に関する当研究者の独自の理論の仮説検定を行った。前者は地域別の産業計、製造業、卸売業・小売業、及び建設業に関する横断面デ-タを、後者は製造業労働者を労職、学歴、企業規模で分類した昭和40年以降の時系列デ-タを用いた実証である。その結果、年齢別賃金格差は、理論の予想通り、労働者の年齢構成比、子供の教育費、住宅費用、定年退職年齢、勤続年数等によって決定されることが確認された。また賃金格差が景気によって影響を受けるというRederの仮説は、あまり強力な仮説でないことも実証された。Rederの仮説は賃金格差に関する著明な理論であるので、今後も様々な方法で、その現実妥当性を検定して行くつもりである。英文の論文は、学歴が賃金格差を規定するきわめて重要な要因であるため、今日では最も重要な学歴決定である大学進学が、どのような要因によって規定されるかを、社会経済学的要因にも注目し、横断面デ-タを使って分析したものである。 以上の他にもさまざまな研究が進行中である。まず近年、年齢別賃金格差に関する理論的・実証的研究が、主として米国で非常に盛んで、労働経済学の中でも最も注目を集めているトピックになっているため、それらの議論を比較整理し、当研究者の理論・実証をその中で位置づけるべく、サ-ベイ論文を現在執筆している。また雇用の内部化要因に関して、最新のゲ-ム論を用いた全く新しい理論を着想したので、そのモデル分析も現在進行中である。これまでの内部化に関する理論は、人的資本の企業特殊性か取引費用に注目したものであるが、この理論はそれらを概念を用いずに、内部化とその程度を説明できる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 荒井一博: "年齢別賃金格差の決定要因" 一橋論叢. 102. 821-841 (1989)
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[Publications] 荒井一博: "わが国の製造業における年齢別賃金格差の推移"
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[Publications] Kazuhiro Arai: "A Cross-Sectional Analysis of the Determinants of Enrollment in Higher Education in Japan" Hitotsubashi Journal of Economics. 30. 101-102 (1989)