1989 Fiscal Year Annual Research Report
下請企業ネットワ-クの生成と発展--比較史的接近--
Project/Area Number |
01530023
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
尾高 煌之助 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90017658)
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Keywords | 下請制 / 中小企業 / ネットワ-ク / 自動車部品 / 日本経済 / 産業政策 / 機振法 |
Research Abstract |
日本の自動車工業は高度成長以後でこそ世界の自動車界に揺るぎない地位を占めているが、1950年代にはその成長を危ぶむ声すら稀ではなかった。その一つの弱点は、自動車部品工業の技術的・経営的脆弱性にあった。事実、この弱点が除去されなかったなら、日本自動車工業のその後の成長はおぼつかなかったといって過言ではない。 そこで1990年度は戦後日本の自動車工業をとりあげ、ここにおける下請企業ネットワ-ク形成過程を分析した。 分析の結果得られた所見は、おおよそ次のごとくである。(イ)戦後日本の自動車部品工業ネットワ-ク生成とその成長のきっかけを作ったのは、産業政策をしての「機振法」(機械工業振興臨時措置法)であった。自動車工業が1965年の貿易自由化に対処できたのはこのゆえである。(ロ)しかし、機振法が作動するには、いくつかの重要な前提条件があった。すなわち、機械工業のある程度の自生的発展、教育程度の高い技術者と技能労働力の存在、意欲に溢れた経営資源、パックス・アメリカ-ナのもとでの海外技術の自由な流入、国内市場規模の順調な拡大、など。(ハ)これらの前提のもとで機振法が有効に機能したのは、その受け皿となった業界団体(すなわち、フォ-マルな下請け企業ネットワ-ク)が、情報の仕訳と伝達、技術改良、製品の単純化と規格化、および共同意思決定のための組織的基礎を提供したからである。いいかえれば、企業の組織的連携が、意思の伝達や情報の流布をめぐる不確定要因を取り除くことによって、合意形成コストを減少させるのに成功したのである。
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Research Products
(1 results)