Research Abstract |
1.本年度も第1年度と同様に,ソ連・東欧9カ国の経済改革の進捗状況を,個所的にかつ詳細に追跡調査することが課題であった。1990年は,ソ連・東欧各国において,市場経済への移行と経済安定化のためのプログラムが政治的対立を経て一本化され,実施に移された年である。このプロセスの実際を示す資料の収集と分析を行ったが,その際わが国のソ連・東欧経済の専門家,来日の経済学者などとの意見交換がきわめて有益であり,これらの人々から提供された資料も大変貴重であった。とくに,ソ連・東欧各国で策定された改革プログラムを大部分収集できた点は,大きな成果であったといえる。 2.この間の研究の成果は,論文「ソ連経済改革構想の現況」などにまとめた。第1年度では,東欧問題に集点をあてたので,今年度はソ連の改革プロセスの分析に重点をおく形で,研究を行った。 3.そこでは,1989年末から1990年8月までの,ソ連政府,ソ連共産党などの改革構想の変遷を扱い,この間に発表された基本的政治文献および制定された基本法律を分析し,当初私的所有に反対であったルシイコフ政府プログラムが,シヤタリンらラジカル改革派の批判のもとに次第に急進化して行った事態を解明した。それと同時にルイシコフ・プログラムには,社会主義への拘泥,現実政治への配慮のために,内部的不整合,矛盾が存在し,その結果ルイシコフ政府のもとで制定された経済改革関連法にも一義的明確性の欠如など,幾多の問題点が含まれることになった状況を明らかにした。 4.東欧については,市場経済化に伴う国内的摩擦,コメコン解体,ガルフ危機・戦争の三重苦の中での経済危機を分析した。 5.来年度は,ソ連における90年秋以降の状況,東欧のその後の発展について整理し,ソ連・東欧全体の動向を総括したい。
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