1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01530024
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Research Institution | Hitotsubashi University, Institute of Economic Research |
Principal Investigator |
西村 可明 一橋大学, 経済研究所, 教授 (60017671)
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Keywords | ペレストロイカ / 経済改革 / 集権制 / 市場経済 / 社会主義 / ソ連 / 独立国家共同体 / 東欧 |
Research Abstract |
1)本年度は,本研究の最終年度にあたるため,ソ連・東欧諸国の個別研究を行いつつも,研究のとりまとめを意識して,総合的検討を実施した。とくに,市場経済化の本格的取り組みを開始して1年前後経過した東欧の経験,ソ連崩壊という世界史的大事件,およびそこでの市場経済化の困難を分析の対象とした。 2)東欧に関しては,IMFの指導下で実施されている,経済リベラリズムにもとづく急進主義的市場化政策が,各国産業に大打撃を与えている実態を分析し,ブレトンウッズ体制に旧ソ連・東欧をいかに組み入れるべきか再考を要すること,いわゆる「ショック・セラピ-」に代る政策の策定が緊要であることを主張すると同時に,その模索を行った。 3)ソ連については,市場経済化プログラムの詳細な分析にもとづいて,既に90年秋以降から市場経済化政策は出口のない袋小路に陥っていることを,91年7月発表論文で指摘し,その打破の試みであった8月ク-デタ-事件の考察にもとづいて,その本質が共和国独立とソ連解体にあることを逸速く主張することができた。またCIS(独立国家共同体)メンバ-にも,その具体的条件を無視して,自由主義的急進主義を機械的に適用することの危険性を強調した。 4)ソ連・東欧の経験が示す市場経済化の諸問題を検討して,これを分析する一般的装置として,「市場経済化の初期条件」を提案したが,これは研究者や官庁の間で反響を呼んだ。 5)以上の研究実施過程において,資料の収集・整理・作成,内外の研究者・ビジネスマンなどからの聞き取り調査を行う上で,研究費補助金がきわめて有効であったので,ここで感謝の意を表したい。
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[Publications] 西村 可明: "ソ連における市場経済化プログラム" 経済研究(91年7月). 42. 261-275 (1991)
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[Publications] 西村 可明: "市場経済化ー中欧の経験とソ連" 世界. No.561. 120-129 (1991)
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[Publications] 西村 可明: "中・東欧における市場経済化Transition to a market economy in Central and Easlern Euroke" Japan Review of International Affairs. Vol.6ー1. (1992)
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[Publications] 西村 可明: "ソ連・東欧の市場経済化と経済リベラリズム" ECOーFORUM. Vol.10. 11-15 (1992)
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[Publications] 西村 可明: "市場経済化の諸問題ー東欧の場合" (『激動する世界と日本経済』TBSブリタニカ). 210-236 (1991)
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[Publications] 西村 可明: "The present situation of the Transition to the market economy in the Souiet Union and the EastーEuropean Countries" Development Strategier for the 2lst Centnry (Institute of Develeping Economies). 292-297 (1992)
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[Publications] (編著)西村 可明: "市場経済化と体制転換ーソ連・東欧・中国ー" JETRO, 216 (1992)