1989 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における在来産業の展開と地域経済の変貌に関する研究-阿波藍を中心にて-
Project/Area Number |
01530044
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
天野 雅敏 愛媛大学, 法文学部, 教授 (80122985)
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Keywords | 在来産業 / 地域経済 / 転換期 / 阿波藍 / 藍商経営 / 肥料問屋 / 所得構成 |
Research Abstract |
本研究は,阿波藍という著名な在来産業をもつ阿波国を対象にして,近代化過程における在来産業の動向と地域経済の変容過程について実証研究をおこなおうとしたものである。 この研究目的を達成するために,本年度は,主として徳島県域の阿波藍商の個別経営文書の資料調査とその収集に努力した。徳島調査は二度実施し,徳島県板野郡松茂町の旧関東売藍商三木与吉郎家の所蔵資料と同郡藍住町の後発藍商奥村家の所蔵資料を閲覧し,必要資料を採録した。また明治期以降鹿児島に進出した旧阿波藍商犬伏縫次郎家の鹿児島における足跡をたどるために,鹿児島調査を実施した。さらに東京の一橋大学経済研究所日本経済統計情報センタ-におもむき,明治期の公刊資料の収集と統計資料類の閲覧・採録をおこなった。これらの調査によって,明治期以降の藍商の経営転換を実証しうる個別経営文書を採録しえたことと徳島県板野郡藍園村の「勧業」統計を全面的に採録しえたことが大きな成果であった。前者のデ-タによると,後発藍商奥村家の所得構成は明治20年代中葉以降大きな変化を示し,藍商所得の比重の低下とあらたな諸商業所得の出現がみられ,肥料問屋への転換が進行していたことがうかがえる。明治20年代後半は阿波藍にとって重要な転換期であったと思われるが,平成2年度はこの論点に留意して,さらに調査と分析をおこなうことにしたい。なお,明治期以降の地域経済の再編過程を検討するための一つの基礎資料として『工場統計表』を購入し,分析の準備をすすめていることと,文書撮影のための写真機をこの機会に新機種に更新させていただいたことを付記しておきたいと思う。
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