1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01530061
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Research Institution | 東京商船大学 |
Principal Investigator |
織田 政夫 東京商船大学, 商船学部, 教授 (80016922)
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Keywords | 内航船員問題 / 内航労働市場 / 内航労働条件 / 内航労働環境 / 内航海運 |
Research Abstract |
当初の予定どおり、わが国内航船員労働市場の需給構造と労働条件ならびに労働環境について、ヒアリングを主とする実態調査を行った。その結果によると、わが国内航海運は労働条件ならびに労働環境の劣悪さのために、労働市場としの魅力を失っている。新人に対する吸引力はもとより、既存船員の流出をくい止める力さえも喪失している。大手の内航運送業者は賃金の引上げ、労働時間の短縮、適正な有給休暇、船内職場環境の改善などに関する乗組員の要求に応じ得る企業体力にあるため、概して乗組員・予備員ともに必要数を確保している。これに対し、中小零細な下請運送業者や船舶貸渡業者は低すぎる非採算的な下請運賃や用船料等の引受けを強いられて疲弊し、乗組員の労働条件の改善要求に応じ得る財政的企業体力にない。内航海運をその底辺において支えているこれら中小零細事業者の運航または所有する内航船は、現代の若者の職場意識からあまりにも乖離した労働条件と労働環境にある。このため、彼らの多くは求人難とこれによる船員不足事態に直面しており、雇用船員の下船による停船の不安に脅かされいる業者も少なくない。ここでは、乗組員をつなぎ止めておくだけの労働条件を提供できないためあるいは新人を確保てきないため、廃業に追い込まれるという労務倒産が現実の問題になっている。今日の内航海運に対する若年船員の意識をみると、自宅から通勤できない、休暇が少ない、労働がキツイ、給料が低い、内航船員の社会的地位が低い、船の居住設備が悪い、嫁さんの来てがない、等の受止め方をしている。一方、外航船から内航船に転職した船員は、操船が難しい、給料が安い、労働がキツイ、航海頻度が多い、休暇が少ない、等の理由から早々に辞めており、定着していない。他方、中小零細事業者の側も未経験者を一人前に育てる経済的余裕がなく、すぐ使える経験者を求める傾向にある。
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