1989 Fiscal Year Annual Research Report
高圧ラマン分光法によるヘム蛋白質の変性機構に関する研究
Project/Area Number |
01540385
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
谷口 吉弘 立命館大学, 理工学部, 教授 (70066702)
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Keywords | 高圧ラマンスペクトル / α-キモトリプシン / 高圧変性 |
Research Abstract |
高圧下におけるラマンスペクトル測定のための耐圧約5kbarまでの高圧ラマンセルを製作した。この高圧ラマンセルを用いてヘムタンパク質を含む色素タンパク質について高圧下で共鳴ラマンスペクトルの測定を試みたがレ-ガ-の発振線との関係で、高圧下で有効なスペクトルの測定を得られるまでにはいたらなかった。この為、タンパク質試料を色素タンパク質のヘムタンパク質から無色の比較的低分子の球状タンパク質であるα-キモトリプシについて高圧ラマスペクトルを約3kbarまで測定した。その結果、タンパク質の主鎮の構造変化であるα-ヘリックスがβ-シ-ト構造に起因するとみられる1670cm^<-1>付近のアミドIおよび1265cm^<-1>および1250cm^<-1>のアミドIIIバンドのピ-クは圧力の増加に伴ってスペクトルはブロ-ドかつ強度は低下した。このことより、高圧下においてタンパク質の主鎮のα-ヘリックスおよびβ-シ-ト構造は破壊されることが示唆された。この結果は、Heremansらのキモトリプシノ-ゲンの圧変性の結果とも一致した。また、主鎮の骨格振動のC-N伸縮振動による1128cm^<-1>付近のラマンバンドも同様の傾向が観察されたことより、高圧下におけるタンパク質分子の主鎮構造は破壊されることが示された。側鎖の構造変化を反映するトリプトファン残基に帰属される1360cm^<-1>のピ-クは1kbarで一旦減少し、3kbarでその強度は再び増加する。トリプトファン残基に由来する高圧ラマンスペクトルの変化は、約1kbarにおいてタンパク質内部に存在するトリプトファン残基が一旦タンパク質の表面に出て、更に圧力の増加に伴なってタンパク質分子間の会合により、再び称小雰囲気中に取り込まれたことを意味している。また、3kbarに新たに表われる1420cm^<-1>付近のラマンバンドはCOO^-基の対称伸縮振動に帰属され、高圧下において、タンパク質の酸性アミノ酸が解離することを明らかにした。
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Research Products
(1 results)