1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01540419
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
立光 斉 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (70101277)
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Keywords | 有機電荷移動錯体 / 有機電導体 / 光制御 / 電子供与体 / 電子受容体 / 光異性化 |
Research Abstract |
有機電荷移動錯体の高導電性発現は、錯体の結晶構造が重要な因子であり、わずかなパッキングの相違でも導電性は著しく変化する。特に非対称型に置換した電子供与体分子や電子受容体分子を含む電荷移動錯体では、供与体分子同士あるいは受容体分子同士の重なり型に同じ向きと逆向きの二種類が可能である。この重なる方向を制御する場合にシスートランスの異性化が利用できる分子の設計を行い、合成を行った。即ち、TTFおよびジシアノキノンイミンをエチレン結合やアゾ基で結合させた二量体の合成を検討した。TTF系の合成ではシスートランス異性化に伴う構造変化を追跡するため、構造既知の非対称型供与体であるエチレンジチオプロピレンジチオーTTFのヨウ素錯体の導電性を検討した。電気化学的に合成したこの錯体の結晶は針状晶と板状晶があり、電気伝導度は板状晶の方が約2000倍大きい。しかし、両者とも電気伝導度の温度変化より半導体の挙動を示し、板状晶では150K付近で相転移が存在する。このことを詳細に検討するためにX線結晶構造解析を試みたが、分解反応が進行するため重なり方は明らかではない。一方、TTF二量体の合成は中間体であるホルミル体の反応性が低く、現在反応性を高めるための置換基の導入を検討している。また電子受容体分子ではビスキノンまで合成が完了し、現在最終段階を検討している。このシスートランス異性化を光あるいは熱を利用して制御した電荷移動錯体の導電性の研究は他に例がなく、現在目的達成をめざして全力を注いでいる状況である。
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