1989 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯林から放出されるガス状有機物質の測定とグロ-バルな大気環境に対する影響の解明
Project/Area Number |
01540498
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
横内 陽子 国立公害研究所, 計測技術部, 主任研究員 (20125230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 喜也 国立公害研究所, 計測技術部, 室長 (20101040)
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Keywords | イソプレン / 熱帯植物 / 大気 |
Research Abstract |
(1)熱帯植物から放出されるイソプレンの日変化測定ーー代表的な熱帯植物が集められている国立博物館筑波実験植物園内の熱帯降雨林温室内(面積550m^2、高さ17.6m)において大気240mlを3時間毎にサンプリングし、そのキャピラリ-GC分析を行なった。サンプリングにはTenax GCを充填した12本の捕集管と電動切り換え弁及びタイマ-から成る自動サンプラ-を開発して用いた。その結果、日中はイソプレンが熱帯降雨林温室内大気の主要有機成分であり、全測定対象有機物質の30ー70%を占めていることが分かった。また、イソプレン濃度は極めて大きな日変化を示し、1989年4月21日ー22日の場合、夜間の最低濃度は0.5ppb、最高は午後3時の32ppbであった。窓の開閉の無かった4月21日のデ-タを基に計算した温室内における日中のイソプレンfluxは、約700μg/m^2・hrであった。これは針葉樹林から放出される全モノテルペンの真夏時の日中放出速度に匹敵するものである。 (2)タイの熱帯雨林、ゴム園内のイソプレン測定ーー1989年11月にタイ国内の熱帯雨林(カオヤイ国立公園)及びゴム園内の大気中イソプレン濃度の測定を行なった。サンプリングは現場でTenax GC(60/80メッシュ)を充填したSUS管に大気1lを通気して行ない、帰国後、この捕集管からの加熱脱着物をキャピラリ-GC/MSにより分析した。測定したイソプレン濃度はいずれの地点においても正午過ぎに最大となる日変化を示した。最大濃度の2〜3ppbは日本における従来の測定デ-タより高濃度であるが、熱帯植物の繁茂状況からはより高濃度が期待されていた。この理由の一つとして、日射量の多い熱帯地域ではヒドロキシルラジカル等によりイソプレンの消滅速度が大きいことが考えられる。イソプレン放出速度の実験およびイソプレンの気相反応生成物の挙動解明が次年度の課題である。
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