1990 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯林から放出されるガス状有機物質の測定とグロ-バルな大気環境に対する影響の解明
Project/Area Number |
01540498
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
横内 陽子 国立環境研究所, 地球環境研究グループ, 主任研究員 (20125230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 喜也 東京農工大学, 農学部, 教授 (20101040)
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Keywords | イソプレン / 熱帯雨林 / 植物起源有機物質 |
Research Abstract |
熱帯雨林起源ガス状有機物質の大気化学的挙動を評価するため、前年度得られたフィ-ルドデ-タを解析すると共に、代表的熱帯植物から放出されるイソプレン以外の成分測定を行なった。 植物の葉から放出される有機物質をオンラインで測定するためのシステムを開発し、7種類の熱帯植物(マンゴ、カカオ、オヒルギ、ホウオウボク、ショレア、パラゴム、キミノバンジロ-)について放出ガス成分の測定を行なった。マンゴは多数のモノテルペンを大量に放出し、数種類のセスキテルペンを放出することも確認された。しかし、その他の熱帯植物ではモノテルペンの放出はそれほど顕著でないという傾向を示した。カカオからは数種のモノテルペンとセスキテルペンの他に分子量98未知成分2種の放出が確認された。オヒルギからはモノテルペンは放出されず、6種類の成分が検出された。ホウオウボクからはシスー3ーヘキセノ-ルと3ーヘキセニルアセテ-トの放出が盛んであった。ショレアからは16種類の成分が検出されたが、その多くはマススペクトルのみからの同定は不可能であった。キミノバンジロ-の場合は数種類のモノテルペンと未知のセスキテルペンが放出されていた。全ての熱帯植物から共通して放出されていたのは3ーヘキセニルアセテ-トであった。 このようにこれまで大気中における検出例のない多種多様の有機物質が熱帯植物から放出されていることが明らかとなった。これらの大気化学的挙動に関しては未知な点が多いが、二重結合を持つものが多いので反応性の高いことが予想される。 また、昨年度測定を行なった熱帯雨林内のイソプレン濃度変動、熱帯植物からのイソプレン放出速度を解析した結果、イソプレンによるOHラジカルの消費は多いときには日中約8×10^6分子/cm^3・secとなり、熱帯林起源のイソプレンがOHラジカルの重要なシンクになり得ることが結論として得られた。
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