1991 Fiscal Year Annual Research Report
過栄養湖におけるハシビロガモの摂食生態ー手賀沼をモデルとしてー
Project/Area Number |
01540556
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Research Institution | Yamachina Institute for Ornithology |
Principal Investigator |
杉森 文夫 (財)山階鳥類研究所, 研究部, 主任研究員 (60087997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青山 莞爾 東邦大学, 理学部, 教授 (70057496)
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Keywords | 過栄養湖 / ハシビロガモ / 摂食生態 / 手賀沼 |
Research Abstract |
1.陸水学的結果:手賀布に流入する栄養塩のレベルはきわめて高いために、植物プランクトンの原存量及び生産量はきわめて高い(Takamura et al.,1986)。今回の調査結果もこれを裏付けるものとなった。しかし、動物プランクトンの餌となる植物プランクトン、バクテリア群集などの水平分布は一様なもので、こうした面から動物プランクトンの不均一な分布は説明できなかった。 2.本種及びその他の水面採餌ガモの環境利用:今年度の調査では本種の最大飛来数は、約140羽で例年よりも低い結果であった。一方、オナガガモの飛来数の顕著な増加がみられ、最大数で3000羽を越えることもみられた。しかし日中及び夜間の各カモ類の環境利用は、これまで同様の傾向を示した。本種は、1月〜3月にかけて飛来数の増加を示し、採餌個体数の割合が昼夜共増加した。また1月と2月行った連続観察の結果では、日中採餌を始めた群れは少なくとも3時間以上連続して採餌を行い、滞在時間のかなりの部分を採餌に費やしていると考えられる。DuBowy(1985)は、カモ類全般についてみると、多くの水面採餌カモ類がその特々に応じて、利用できる餌生物ー大型の水性植物や抵生動物などーを採餌行動を変ながら利用しているのに対して、本種は動物プランクトンの現存量の増加する期間に集中して採餌を行い、それ以外の時間は採餌が余りみられないという。 3.手賀沼における近年の急激な富栄養価の進行は、越冬中のカモ類に対する採餌の場としての価値を著しく低下させた。しかし本種の場合は、動物プランクトンなどの水中の浮遊微生物を採餌できるという特性により、富栄養価した手賀沼をも採餌の場として有効に利用しているといえる。こうしたカモ類の環境利用状況は、湖沼の水質あるいは富栄養化の状況を反映し、湖沼の水質保全などの問題を論議する際には考慮すべき視点である。
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