1990 Fiscal Year Final Research Report Summary
細胞性粘菌における細胞周期依存的な発生・分化の研究
Project/Area Number |
01540574
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
植物形態・分類学
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
前田 靖男 東北大学, 理学部, 助教授 (50025417)
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Project Period (FY) |
1989 – 1990
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Keywords | 細胞性粘菌 / キイロタマホコリカビ / 細胞周期 / 同調培養 / 飢餓処理 / 細胞分化 / パタ-ン形成 / 増殖と分化 |
Research Abstract |
細胞が細胞周期(cell cycle)のどの時期に増殖から分化へ移行するかは,細胞のその後の発生・分化に重要な意味をもっている。細胞性粘菌は形態形成や細胞分化の研究モデルとしてすぐれており,この生物における多細胞体制の確立過程や集団内での細胞分化・パタ-ン形成の過程に,飢餓処理(発生開始のためのシグナル)の時点での個々の細胞の細胞周期内位置が深く関与している。すなわち,細胞周期の種々の位置にある細胞について飢餓処理後の細胞数の変化,DNA合生の有無とその時期を調べたところ,粘菌(Dictyostelium discoideum Axー2)細胞は周囲に栄養源がなくなると,G_2期内の1つの特異点(putative shift point;PS点)において増殖サイクルから離脱し分化状態に移行することが示された。また,飢餓処理の時点での細胞周期内位置がその後の発生において規定するものは細胞集団内での細胞の位置どりであって,これはPS点に至るまでのタイミングの差に依存していること,さらに分化の比率そのものは形成された細胞集団内において一定の値になるように調節されていることがわかった。最近,増殖と分化の切り換えに関与なるタンパク質を解析するために,同調培養系を用いて,PS点近傍においてのみ栄養源の有無に応じて変動するタンパク質があるかどうかを2次元電気泳動法によって調べた。その結果,飢餓処理に呼応してPS点近傍でのみ特異的にその存在量を増すタンパク質としてこれまでのところ1つ(lータンパク質と略称)が見出された。これは比較的塩基性の強いタンパク質であり,SDSーPAGEから推定される分子量は約29,000である。増殖と分化の切る換えの機構を明らかにする上で,PS点での細胞周期からの離脱時におけるlータンパク質の機能は興味深く,今後の重要な研究課題である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 阿部 知顕: "The prestalk/prespore differentiation and polarized cell movement of the intracellular Ca^<2+>ーconcentration." Protoplasma. 151. 175-178 (1989)
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[Publications] 前田 靖男: "Transition of starving Dictyostelium cells to differentiation phase at a particular point of the cell cycle." Differentiation. 41. 169-175 (1989)
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[Publications] 飯島 典生: "The influence of pH on the choice between sexual and asexual development in Dictyostelium mucoroides." Journal of General Microbiology. 136. 1739-1745 (1990)
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[Publications] 飯島 典生: "Involvement of cytoplasmic pH in the production of ethylene,a potent inducer of sexual development in Dictyostelium mucoroides." Protoplasma. 156. (1990)