1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01540588
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中野 實 千葉大学, 理学部, 助教授 (80009604)
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Keywords | 透明帯 / 哺乳類卵子 / 受精 / 細胞間認識 / 精子・卵子相互作用 / 精子レセプタ- |
Research Abstract |
昨年度に引き続き,ブタの卵子表層を形成する透明帯中の精子レセプタ-の研究を推進した。昨年度は,主に本レセプタ-の実体と考えられている,透明帯糖蛋白質の糖鎖部分の構造解析を行なったが,今年度はその成果に基づきレセプタ-部位の同定をめざした。まず,可溶化した透明帯糖蛋白質を蛍光試薬(FITC)で修飾後,先体反応を起こす前の精子に加えると,精くの頭帽部(先体部分)が蛍光性を持つ様になることが蛍光顕微鏡で観察された。しかしイオノフォアA23187処理で先体反応を進行させ頭帽を脱落させた精子にはFTC・蛋白質は結合せず,蛍光は脱落した頭帽の方に検出された。また先体反応の初期過程にある,頭帽が脱落せず先体部が胞状化した精子にもFTC・蛋白質は結合した。従って,精子頭部の細胞膜または先体の外膜が透明帯に結合するものと思われる。つぎに,この精子と卵子の結合に係わる卵子側の精子レセプタ-部位を,精子ー卵子結合の阻害活性をみる競合法で検索した。その結果,(1)透明帯を形成する糖蛋白質グル-プ(PZP1〜3)のうちPZP3が,(2)PZP3に含まれるα,βー両蛋白質のうちα蛋白質が,(3)αー蛋白質が持つ硫酸基に富む酸性糖鎖と中性糖鎖のうちでは中性の糖鎖が精子レセプタ-活性を担っていることがわかった。更に,PZP3のエンドーβーガラクトシダ-ゼ消化で得た糖ペプチド>プロナ-ゼ消化で得た糖ペプチド>ヒドラジン分解後のDEAE・HPLCで得た中性糖鎖の順でレセプタ-活性が弱くなることがわかり,活性発現には蛋白質部分も必要であることが判明した。蛋白質骨格の高次構造が,活性ある糖鎖の配向性を維持するものと思われる。以上の結果は,ブタの精子レセプタ-は昨年度に決めたPZP3の中性糖鎖群のいずれかが担うことを示しており,現在,どの糖鎖かを決定するつめの実験が進行中である。
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[Publications] 野口 悟.: "ブタ透明帯糖タンパク質,PZP3,の糖鎖構造" 生化学. 62. 881 (1990)
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[Publications] 中野 實: "ブタ精子先体βーヘキソサミニダ-ゼのブタ透明帯への作用" 生化学. 62. 881 (1990)
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[Publications] 畠中 由美子: "ブタ卵子透明帯の精子受容体" 生化学. 62. 882 (1990)
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[Publications] 矢口 学: "受精で変化する透明帯糖タンパク質:PZP2" 生化学. 62. 882 (1990)
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[Publications] 畠中 由美子: "Structural Characterization of Sperm Receptor of Porcine Zone Pellucida" Biology of Reproduction.