1989 Fiscal Year Annual Research Report
魚類生殖巣の分化過程での生殖細胞と体細胞の相互作用の解析
Project/Area Number |
01540616
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
濱口 哲 新潟大学, 教養部, 助教授 (20126444)
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Keywords | メダカ(Oryzias latipes) / 硬骨魚類 / 生殖細胞 / セルトリ細胞 / 顆粒膜細胞 / 性分化 / 生殖巣 / レクチン |
Research Abstract |
メダカ(Oryzias latipes)の生殖細胞の分化段階は、増殖動態・超微形態から判定されてきた。本研究では、レクチンを用い、生殖細胞とその支持細胞の分化段階の区別を試みた。BPA、GA-I、GS-II、ConA、DBA、LCA、LPA、MPA、PNA、RCA-I、SBA、UEA-I、WGAの13種類のレクチンを試みたが、BPA、LPA、SBA、は雄性生殖細胞に、BPA、LCA、LPA、MPA、PNA、SBA、WGAはセルトリ細胞に結合した。雌性生殖細胞には、BPAとLCAが微かに結合し、顆粒膜細胞には、BPA、LCA、LPA、MPA、PNAが結合した。それらの結合の強さは、生殖細胞・体細胞ともに分化段階に応じて異なっていた。この結果から、形態上区別できない精原細胞と卵原細胞は、前者にBPAやSBAが結合することによって、また、体腔上皮細胞に由来するセルトリ細胞と顆粒膜細胞はBPA、MPA、PNAの結合の強さの違いから、区別できることが分かった。即ち、レクチンの結合性から生殖細胞と体細胞の性を区別することが可能になった。メダカに雌性ホルモンを投与して"精巣卵"をつくり、精原細胞から卵母細胞が、セルトリ細胞から顆粒膜細胞が形成される過程でのレクチン結合性を調べたところ、精巣卵の濾胞と正常な卵母細胞の濾胞は同様なレクチン結合性を示し、レクチンを性分化の指標とすることの信頼性が確認された。現在、発生過程のどの段階でそれらの性差が現れてくるかについて検討している。 韓国東南部の順天市産のメダカが、孵化直後の雄の生殖細胞数が多く、それは第2次卵原細胞様の細胞が存在することによることが分かった。この系統のメダカでは、生殖細胞の性分化のdefault型である雌方向への分化が一時的に進んだ後に雄方向へ分化している可能性がある。この系統を用いて雄への分化の開始時期の調節機構の存在を検討することが期待されるが、その際の雄への分化の指標としてレクチンは有用であろうと考えられる。
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[Publications] Naoki Shibata: "Lectin Binding in ovaries and testis-ova producing testis of fish Oryzias latipes" Zoological Science. 6. 1168 (1989)
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[Publications] Satoshi Hamaguchi: "A morphological study on the fertility of interspecific hybrids between Oryzias latipes and O.curvinotus" Zoological Science. 6. 1112 (1989)
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[Publications] Mitsuru Sakaizumi: "Production of triploid medaka by interspecific hybridization between closely related species of genus Oryzias" Zoological Science. 6. 1113、 (1989)
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[Publications] 濱口哲: "性腺のバイオメカニズム(石田一夫・岩澤久彰編)" 株式会社アイピ-シ-, 473 (1990)
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[Publications] 濱口哲: "メダカの生物学-最近の進歩-(江上信夫,山上健次郎,嶋昭紘編)" 東京大学出版会, (1990)