1990 Fiscal Year Annual Research Report
南部阿武隈山地の深成岩類と変成岩類の地質学的・岩石学的研究
Project/Area Number |
01540649
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
田中 久雄 山形大学, 理学部, 助教授 (30007174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
落合 清茂 大阪府科学教育センター, 研修部, 主任研修員 (00125246)
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Keywords | 鮫川岩体 / 石川岩体 / 岩石記載 / 棚倉構造線 / 変形組織 / 変成作用 / 希土類元素規格化パタ-ン |
Research Abstract |
福島県鮫川村北部の鮫川・深成岩体と変成岩類との境界付近の地域と、塙町東部の石川岩体南部と棚倉構造線東縁断層との境界付近の地域について、重点的に地質調査を行い、多数の岩石試料を採集した。そして、多数の岩石薄片を作製し、顕微鏡下での記載を行った。また、鮫川岩体周辺部のミグマタイト分布地域の岩石について、顕微鏡下での特徴を明らかにすると共に、岩石の主要成分と希土類元素の化学分析を行った。主に以上の調査・研究を行った結果、以下の事が明らかとなった。鮫川岩体北部の最外縁部では岩体中心部と岩相が多少異なり、単斜輝石を少量含有する花崗閃緑岩が分布する。塙町東部には片状黒雲母角閃石ト-ナル岩、黒雲母花崗閃緑岩類、竹貫変成岩類が錯綜して分布するが、それらの岩石はいずれも棚倉構造線に近づくに従い、石英の細粒化・波動消光・伸長、斜長石の変形双晶・波動消光、黒雲母のキンクバンド・波動消光などの変形組織を呈する。この変形組織は棚倉構造線東縁部に近接した岩石で最も著しく、構造線から離れるに従い無変形組織の岩石に漸移しており、後者の岩石が生成した約1億年前には棚倉構造線がすでに活動していたことを示している。また、変形組織の発達した岩石は再結晶生成鉱物として時に黒雲母、白雲母、緑簾石、ざくろ石、角閃石を含有し、緑簾石角閃岩相の変成作用を、以前の岩石生成の条件に重複して蒙ったと推定される。角閃岩の希土類元素規格化パタ-ンはほぼ水平で、MORBによく似ている。塙町湯船に少量分布するハンレイ岩はト-ナル岩・花崗閃緑岩より希土類元素の富み、リン灰石、角閃石、褐簾石の濃集が考えられる。ト-ナル岩・花崗閃緑岩は重希土類元素にやや欠乏した、右下がりの規格化パタ-ンを示し、角閃石を主とする分別結晶作用が推定される。
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