1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01550012
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木村 初男 名古屋大学, 工学部, 教授 (60023032)
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Keywords | 液晶のスメクテイック相 / 棒状分子系の液晶状態 / 分子間排除体積効果 / 第3ビリアル近似 / ネマテイック・スメクテイックA相転移 / 相転移濃度 / スメクテイック相の層厚さ / 層圧縮弾性率 |
Research Abstract |
液晶のスメクティック相は、方位の揃った棒状分子が、1次元の周期的構造をもって配位したものである。本年度は、棒状分子系の液体状態において、この相が安定に実現する分子的機構を明らかにするために、分子を円柱形の剛体とするモデルを用い、これらの分子が完全に平行に揃った液晶状態(ネマテイック相)の振る舞いを統計熱力学により理論的に検討した。スメクテイックA相が、分子間排除体積効果によって安定化されることは、すでに平均場近似(第2ビリアル近似)によって示されてしたが、この近似の精度は低いので、本年度は(1)第3ビリアル近似により理論を改良して計算を行ない、ネマテイック相からスメクテイックA相への二次の濃度相転移が起こることを確認し、高い精度の転移濃度として体積分率0.355という値を得た。この値は、最近オランダのグル-プが行なった計算機シミュレ-ションによる評価値0.35や、米国で行われたタバコモザイクビ-ルス溶液での実験値0.4と極めてよく一致している。これにより、長い棒状高分子系では排除体積効果がスメクテイックA相の秩序形成の主要な機構であることが推定された。(2)スメクテイック相の層の厚さの計算値1.354L(Lは分子長さ)も、シミュレ-ションによる値1.27Lとよく一致した。(3)排除体積効果と分子間引力ポテンシャルとの総合的効果として生じる、ネマテイック・スメクテイックA両相間の温度相転移が二次転移であることを示し、転移温度、秩序度、スメクテイック相の層厚さ、層圧縮弾性率などについての分子論的表式をそれぞれ導いた。層厚さが、濃度および温度の弱い減少関数であるという結論は、一般の温度相転移型液晶での実験結果と定性的に良く一致した。また、層圧縮弾性率の理論値も、代表的な液晶での実験値とおおよそ一致した。
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Research Products
(1 results)