1989 Fiscal Year Annual Research Report
温度・負荷速度をパラメ-タとした破壊のメカニズムに関する転位論的研究
Project/Area Number |
01550046
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岸田 敬三 大阪大学, 工学部, 教授 (00029068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 元博 大阪大学, 工学部, 助手 (40164256)
片岡 俊彦 大阪大学, 工学部, 教授 (50029328)
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Keywords | 破壊じん性 / Kcl単結晶 / 延性-ぜい遷移 / 応力遮蔽効果 |
Research Abstract |
材料の破壊じん性に影響を及ぼすき裂先端での塑性変形を微視的に見れば、き裂先端からの転位の生成と運動であると考えられる。そこで、転位の観察が容易に行なえるイオン結晶(KC1単結晶)を用いて、破壊試験を行ない、以下のようなことがわかった。(1)破壊じん性は、温度の上昇に伴ない増加した。温度が373Kを越えると、破壊じん性は急激に上昇し、423Kでは室温での破壊じん性に較べて、3倍以上の応力拡大係数が作用してもき裂の進展は見られなかった。(2)試験中に、き裂先端付近を応力-複屈折効果を利用して観察すると、き裂先端から斜め45°方向に伸びる特徴的な像が見られた。これは、き裂先端から生成した転位によるすべり帯に対応するものである。このすべり帯は、荷重が増加するにつれ、その長さが増加した。また、同一の応力拡大係数が作用している場合を較べると、温度が高いすべり帯は長かった。(3)破断後のき裂先端付近における転位の分布をエッチピット法により調べると、温度の上昇に伴ってすべり帯が長くなり、き裂先端から生成した転位の数も多くなっていることが確かめられた。 以上のように、KC1単結晶は鉄鋼材料などと同様に延性-ぜい性遷移を示すことがわかった。き裂先端から生成した転位は、き裂先端に圧縮の応力場を作る。このため、外力がき裂に負荷されても転位によりき裂先端の応力場は遮蔽されるので、破壊が生じるときの外力は、転位が存在しない時の場合に較べて大きくなる。このような効果は、応力遮蔽効果と呼ばれている。温度が上昇すると、き裂先端からの転位の生成頻度が増加し、それに伴い転位による応力遮蔽効果も増大する。このことが、温度の上昇に伴う破壊じん性の増加を引き起こしたと考えられる。
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