1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01550077
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
野末 章 上智大学, 理工学部, 助教授 (80146802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 啓史 上智大学, 理工学部, 助手 (30154579)
白砂 洋志夫 上智大学, 理工学部, 助手 (90053652)
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Keywords | チタン合金 / 水素脆性 / 熱処理 |
Research Abstract |
本年度はβ型チタン合金の水素脆性感受性を低減する研究を実施した。代表的β型チタン合金であるTiー15Vー3Crー3Snー3Alを用いて、横型の定荷重装置により一定負荷し、室温の50mol/m^3硫酸水溶液において、白金板を対極とし、電流密度200A/m^2で陰極電解により水素吸蔵を行い、き裂進展速度を測定した。最初に、析出α相の水素脆性感受性に与える影響を検討するために、溶体化処理850℃、時効温度510℃で時効時間を変化させた。その結果、時効時間の減少、すなわち析出α相量の減少に伴い、き裂進展速度da/dtは低下した。よって、析出α相の量を減少させることがβ型チタン合金の水素脆性感受性の低下をもたらすと期待される。しかし、析出α相量の減少は強度低下をもたらし、実用上問題となりうる。そこで、析出α相の分布状態を制御することにより、強度低下を伴わず、水素脆性感受性を低下させる方法を検討した。短時間の時効処理材では、β粒界部においてき裂進展が抑制させているこが破面観察より認められており、さらにβ粒界近傍にα相の無析出帯が観察された。この無析出帯は低強度、高靭性であることから、き裂進展の阻止物として作用した思われる。よって、この無析出帯を適切に分布させ、β粒内にはα相を均一に析出することが可能ならば、本研究の目的に合致した合金が作製されたことになる。そこで、比較的高温の950℃で溶体化処理後、510℃で4時間の時効処理を施し、β粒界付近へのα相の析出を抑制し、β粒内にα相を均一に析出させるために最初の時効温度より低温の440℃で3時間の時効を行った。この材料ではβ粒界にはα相のほぼ無析出帯が生成され、β粒内には比較的均一にα相が析出した組織となった。そのda/dtは十分低下し、実用的に十分な強度(σ_B=約125kg/mm^2)も有しており、ほぼ目標のβ型チタン合金が作製された。
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