1989 Fiscal Year Annual Research Report
可逆的光応答機能を有する縮合多環芳香族類およびキノン類の設計と合成
Project/Area Number |
01550669
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三木 定雄 京都大学, 工学部, 助手 (30135537)
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Keywords | 光応答 / 原子価異性 / フォトクロミズム / アントラキノン / ナフタセンキノン |
Research Abstract |
本研究では、芳香族化合物やキノン類の分子内にこみあいによる興味ある分子構造および電子構造の変化やそれに伴う特異な光原子価異性化反応の検討、ならびにその光異性化に基ずくフォトクロミック系の開発等を行なった。その結果、1、2、3位に嵩高い置換基を導入したナフトキノン、アントラキノンにおいて,可逆的な光ヘミ-ヂュワ-化が起こること、ならびにトリ-t-ブチルナフタセンキノンではナフタセンキノバレンとの間に可逆的な光原子価異性化が観測され、これらの反応系で新しいフォトフロミック系を構築することができた。 一連のキノン類誘導体において特徴的なことは、対応する母体化合物の最長波長吸収帯がnπ型であるのに対し、光異性化に活性なキノンの誘導体の最長波長吸収帯はいずれも大きな分子吸光係数を示し、ππ遷移に対応しているものと考えられる。トリ-t-ブチルアントラキノンは凍結媒体中リン光が観測されるがそのスペクトル形態から最低励起三重項状態もππ性を強く帯びていることが分かった。これは、1、2-ジ-t-ブチルアントラキノンの吸収スペクトル及びリン光スペクトルが母体アントラキノンに類似していることと対照的である。ちなみに1、2-ジ-t-ブチルアントラキノンは光原子価異性化に十分なこみあいを有していると考えられるにもかかわらず、光照射で分子内水素引き抜きで開始される生成物のみを与え、分子価異性化は全く進行しない。一連の原子価異性化が、励起一重項から進行するのか三重項状態を経るのかは定かではないが、以上の結果はいずれの状態においても最低励起状態がππ性を帯びていることを示唆しており、キノン系化合物として珍しい芳香環π系での結合の組み換え反応が進行することが合理的に理解される。
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[Publications] Sadao Miki: "Synthesis and Photochemical Reaction of a Stable Isobenzofuran Derivative" Tetrahedron Letters. 30. 103-104 (1989)
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[Publications] Sadao Miki: "Donor-Acceptor Norbornadiene/Quadricyclane of High Miscibility with Organic Media" Chemistry Express. 4. 53-56 (1989)