1989 Fiscal Year Annual Research Report
合成二分子膜によるヘリックス超形態の形成とその構造に関する研究
Project/Area Number |
01550687
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山田 哲弘 千葉大学, 教育学部, 助教授 (40182547)
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Keywords | 二分子膜 / ヘリックス / 光学顕微鏡 / フ-リエ変換赤外分光 / 可視・紫外分光 / 偶奇効果 / 疎水鎖 |
Research Abstract |
本研究は二分子膜が形成するヘリックス超構造体について、(1)ヘリックス形成を支配する要因と(2)ヘリックス中での分子配向を明らかにすることが目的であり、本年度までに次のような知見等の成果を得た。 1.ヘリックス形成に影響する因子について:二鎖型のキラル両親媒性分子を用い水中でのヘリックス形成を光学顕微鏡で観察した。疎水鎖長とヘリックス形成の関係を調べた結果、鎖長が長くなるに従いヘリックス形成は抑制されるものの、すべての化合物からヘリックスが形成された。特に最長鎖長の化合物は従来ヘリックスを形成しないとされていたものであり、本研究によりはじめてヘリックス形成能を有することがわかった。熟成温度・時間とヘリックス形成を調べた結果、二分子膜水溶液をゲル-液晶相転移温度(Tc)以上で数日間熟成した後、Tcより約10℃低い温度で熟成を続ければ、疎水鎖長によらず同程度の長さをもったヘリックスが同程度の数で形成されることがわかった。 2.分子配向の検討:上述の二分子膜水溶液の赤外スペクトルを経時的に記録した結果、ヘリックスの数や大きさは、吸収波数に影響しないことがわかった。しかし、疎水鎖中の炭素数が偶数であるか奇数であるかによって吸収波数が異なるという偶奇効果を新たに見い出した。この偶奇効果は、アゾベンゼン発色団を含む一鎖型の膜化合物を用い、紫外スペクトルからも観察できた。これらの二分子膜もヘリックスを形成したがその時点での吸収極大は疎水鎖中の炭素が偶数個の時350nmにあり、奇数個の時320nmにあった。 以上の結果はヘリックスが分子構造よりも熟成など外的因子に支配されて形成されることを示唆している。また、ヘリックス中の分子配向は疎水鎖中の炭素数が偶数であるか奇数であるかによって異なっていることも明らかになった。
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[Publications] Norihiro Yamada: "Alternation of Absorption Maxima in Helical Superstructures of Chiral,Single-chain Ammonium Amphiphiles" Journal of The Chemical Society,Chemical Communications(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.). (1990)