1989 Fiscal Year Annual Research Report
ポリシランの光、放射線分解過程の吸収スペクトル法による解析
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01550722
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Research Institution | Osaka Prefectural Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
入江 せつ子 大阪府立放射線中央研究所, 第4部, 研究員 (90100180)
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Keywords | ポリシラン / 放射線分解 / 吸収スペクトル |
Research Abstract |
ポリシランの主鎖を構成するSiーSi結合は近紫外領域に吸収をもつため、従来のCーC結合をもつ高分子では困難であった主鎖の電子状態に関する情報を紫外吸収スペクトル法により、容易に得ることが期待される。すなわち、高分子主鎖の持続長、重合度あるいはコンホメ-ションなど主鎖の電子状態に反映される情報を、紫外吸収スペクトル法により解析することの可能性がでてきている。本研究では、ポリスチレンのCーC結合がSiーSi結合に置きかわったポリシラスチレンの合成を試みた。すなわち、ジメチル基とメチルフェニル基を側鎖に持つポリシラスチレン換算で分子量約6万7千、分子量分布はブロ-ドであった。このポリシラスチレンについてその放射線分解過程を吸収スペクトル法により解析することを試みた。ポリシラスチレンのラジカルイオンの吸収スペクトルをγ線照射、77k,剛性溶媒法及び室温におけるパルスラジオリシス法により測定した。ラジカルアニオンの吸収は2ーメチルテトラヒドロフラン中で、365nm、ラジカルカチオンの吸収は、nーブチルクロライド中で、358、2000nmに観測された。近赤外線領域における吸収は側鎖のフェニル基間の相互作用により生成したダイマ-ラジカルカチオンによるものと同定される。近赤外部の吸収は昇温により1700nmにブル-シフトした。このことはダイマ-ラジカルカチオンのコンホメ-ション変化によるものと考えられる。さらに、パルスラジオリシス法により、ラジカルアニオン ラジカルカチオンの寿命をそれぞれ30、85μsecと求めた。これらの結果より、ポリスラスチレンの放射線分解過程においては、ラジカルイオンが何らかの関与をしている可能性が考えられる。今後は、分子量分布のブロ-ドなポリシラスチレンをGPC分取することにより、単分散試料を得ることを目指す。
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[Publications] S.Irie: "Selective Formose Reaction Initiated by γーIrradiation." Carbohydr.Res.190. 23-28 (1989)
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[Publications] R.Taniguchi,T.Yamamoto,S.Irie: "Detection of Charged Particles Emitted by Electrolytiーcally Induced Cold Nuclear Fusion." Jpn.J.Appl.Phys.28. L2021-L2023 (1989)
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[Publications] S.Irie,K.Oka,R.Nakao,M.Irie: "Electronic Spectra of Radical Ions of Cyclic Polysilanes." J.Organomet.Chem. (1990)