1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01550730
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹内 寛 名古屋大学, 工学部, 助教授 (40043286)
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Keywords | 逆相ミセル / タンパク質 / 可溶化平衡 / 抽出速度 / 液膜分離 |
Research Abstract |
イソオクタンのAOT溶液中に形成される逆相ミセルを用いるタンパク質の抽出に関して、以下の成果を得た。〔1〕三種のタンパク質(リゾチ-ム・リボヌクレア-ゼA・α-キモトリプシン)について検討し、水相イオン強度(I)が高いときタンパク質と逆ミセルを構成するAOTとの静電気的引力が低下するため、抽出率は減少する。また油相中の水分濃度と逆ミセルサイズを検討し、Iの増大がミセル径を小さくし、そのサイズ効果による抽出率の低下も確認された。水相pHがタンパク質の等電点より高い領域では静電気的な反撥力により抽出されない。このことは水溶液のIとpHを調整することにより、タンパク質の相互分離が可能なことを示唆する。さらに抽出平衡時の油相中のタンパク質濃度はある飽和点を示し、その限界濃度は油相水分濃度により一義的に決まることを見い出した。〔2〕抽出速度:平界面接触撹拌セルにより水相から油相及び逆ミセル相から水相へのタンパク質の移動量をUV計によるオンライン測定法で決定した。得られた正抽出速度は水相側のIとpHの影響を受けるが、AOT濃度には依存しない。また油相に予めタンパク質を負荷させた逆相ミセル溶液による抽出速度は、その負荷率によって変化しない。この原因は不明であり、可溶化にるタンパク質の抽出機構の解明が特に重要なことを示唆する。一方、逆抽出速度は水相pHが等電点を越えると急激に増大する。〔3〕液膜によるタンパク質の分離:バルク型液膜を通してのリゾチ-ムとリボヌクレア-ゼAの輸送及び相互分離を試み、抽出平衡と速度デ-タに基づき解析した。抽出側及び逆抽出側の水相条件を適当に設定することによりリゾチ-ムは選択的に分離できた。12時間の移動実験により、リゾチ-ムは85%以上が回収側に濃縮されるのに対して、リボヌクレア-ゼAは5%以下の移動にとどまり、速度差分離が可能なことを見い出した。
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