1990 Fiscal Year Annual Research Report
植物毛状根細胞培養による天然有用物質の生産とその分離・回収システムの確立
Project/Area Number |
01550763
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田谷 正仁 大阪大学, 基礎工学部, 助教授 (60144127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東稔 節治 大阪大学, 基礎工学部, 教授 (40029418)
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Keywords | 植物細胞培養 / 毛状根細胞 / バイオリアクタ- / アグロバクテリウムリゾゲネス / ス-パ-オキシドジスムタ-ゼ生産 / 色素生産 |
Research Abstract |
種々の植物より毛状根の誘導を試み,毛状根細胞培養に関する工学的観点からの検討を行った結果,以下のような知見を得た。 1.パックブンおよび西洋ワサビから誘導した毛状根は,高いス-パ-オキシドジスムタ-ゼ(以下SODと略)活性を有していた。これら両毛状根の培養における窒素源の影響を検討したところ,培地中のNH_<4^+>は毛状根の増殖に対して阻害的に作用した。NH_<4^+>の阻害を非拮抗型の増殖速度式で表わして,分枝増殖モデルを適用したところ,毛状根の増殖経過をよく説明できた。窒素源としてNO_<3^->を含む培地中で毛状根の高い増殖速度が得られたが,NH_<4^+>の存在は毛状根中のSOD活性を向上させる効果を示した。そこで,パックブン毛状根を用いた二段階培養を行った。すなわち,細胞増殖期は窒素源としてNO_<3^->を含有する培地を用い,SOD生産期はNH_<4^+>を含む培地を用いた。この二段階培養システムでは,NO_<3^->を窒素源として培養した場合よりも5〜7倍高いSODの生産性が達成された。 2.赤ビ-トより誘導された毛状根細胞の培養において,その培養中に振盪を停止(酸素供給を制限)することにより,著量の細胞内色素(主にベタニンおよびブルガキサンチンーI)が培地中に分泌され,しかも毛状根細胞はその後も再増殖能を保持していることが分かった。毛状根の細胞増殖期と振盪停止による色素の分泌期を繰り返す反復回分培養を行ったところ,全細胞内色素の20〜25%が培地中に回収できた。また,培地中に分泌された色素成分は,毛状根や原植物の細胞中から得られるものと同一であることが確認された。さらに,培地中からの色素の分離・回収を目的として種々の吸着担体を試験したところ,スチレンージビニルベンゼン系樹脂が適していることが分かり,本樹脂カラムを組み込んだビ-ト毛状根のバイオリアクタ-システムを開発した。
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[Publications] Masahiro Kinoーoka: "Conductometric estimation of main inorganic nutrients in plant cell cultures" Journal of Chemical Engineering of Japan. 24. (1991)
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[Publications] 紀ノ岡 正博: "植物毛状根培養における窒素源の効果を考慮したsuperoxide dismutaseの生産" 化学工学論文集.
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[Publications] Masahito Taya: "Induction of hairy root from red beet and extracellular production of pigments by the transformed root culture" Journal of Fermentation and Bioengineering.
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[Publications] 田谷 正仁: "国眼孝雄,松本幹治編;メンブレンリアクタ-応用ハンドブック" サイエンスフォ-ラム, 334 (1990)
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[Publications] 紀ノ岡 正博: "化学工学会生物生産工学特別研究会編;化学工学シンポジウムシリ-ズ・生物機能の応用とバイオリアクタ-" 化学工学会, (1991)