1989 Fiscal Year Annual Research Report
ノカルディア属放線菌細胞表層物質によるバクテリア細胞凝集機構
Project/Area Number |
01550764
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
小泉 淳一 島根大学, 農学部, 助教授 (00150334)
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Keywords | ノカルディア / 凝集 / フロック形成 / 協同作業 / 環境微生物学 |
Research Abstract |
横須賀市下水処理場から分離した放線菌Nocardia amarae YK1は,静置培養では気液界面にマット状に増殖し、そうした増殖をさせたときの細胞洗液中に、他のバクテリアを凝集させる機能を持つ物質が存在した。この機能物質にFIXという仮称を与え、回収、精製し、その物質構造に関する知見を求めようとしたところ、興味深い新たな現象に遭遇した。 N.amarae YK1の細胞表層物質の溶脱について、0.1N NaOHを用いたアルカリ溶脱と0.1N HClによる酸溶脱を用いた。それぞれの溶脱液に溶脱された物質は、アルカリ溶脱液についてはpHを4に、酸溶脱液についてはpHを8にすることで、凝析により回収できた(画分1および2)。アルカリ溶脱液から回収した画分1はさらに、酸性条件におけるジエチルエ-テルとn-ブタノ-ルに対する溶解性の違いにより、酸性条件でジエチルエ-テルに抽出される疎水的な画分11、ジエチルエ-テルには抽出されないが、酸性条件でn-ブタノ-ルに抽出される画分12、そして両溶媒に不溶な画分13の3画分に分けられた。画分2は、画分1のようには分画することはできなかった。画分12および13は、それが在る溶液のpHを4にすると、そこに懸濁している他の粒子、例えばカオリン粒子を凝集させる活性を有し、その活性は121℃、20minの熱処理では失われないものの、プロデア-ゼによるタンパク分解処理では消失した。画分12と13の凝集活性は、界面活性剤に対する応答においては異っていた。こうした懸濁粒子に対する凝集活性を、種々の条件および各画分の再構成系において調査したところ、pH7の中性溶液で懸濁粒子を凝集せしむるためには、画分11、12、13および2つの共存が必要なことが判明し、ノカルディア属放線菌であるYK1株細胞表層物質によるバクテリア細胞凝集は、複数の表層物質の協同作業に因るものであると結論できた。
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