1991 Fiscal Year Annual Research Report
イネにおける脱粒性遺伝子と半矮性遺伝子の連鎖分析および脱粒性の発現機構
Project/Area Number |
01560002
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
菊池 文雄 筑波大学, 農林学系, 教授 (30161425)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生井 兵治 筑波大学, 農林学系, 助教授 (80015677)
|
Keywords | イネ / 脱粒性遺伝子 / 半矮性遺伝子 / 連鎖 / 離層組織 |
Research Abstract |
前年度まで、イネの第1染色体に座乗する半矮性遺伝子sdー1が劣性の脱粒性遺伝子と約13%の組換価で連鎖していることを明らかにした。この脱粒性遺伝子はshー2と命名された。 本年度、この脱粒性遺伝子の発現を,半矮性準同貭遺伝子系統を用いて組織学的に調べたところ、この遺伝子は護頴基部に離層を形成させる作用をもつことが明らかになった。離層は出穂前の頴花生長期にすでに形成されていたが、脱粒し始めるのは出穂後33日目からであった。イニド型ならびに韓国の日印交雑品種は、小枝梗の物理的強度が日本型品種と比較して弱かったが、脱粒性遺伝子shー2は小枝梗の物理的強度とは無関係であった。脱粒性測定装置によって脱粒性程度を調査したところ、shー2に関してヘテロ個体は劣性ホモの個体と比較して脱粒性程度が小さく,優性ホモ個体に比べてやや脱粒性程度が大きかった。このことから、shー2は不完全劣性があることがわかった。一方、ヘテロ個体の護頴基部には離層が形成されていたことから、shー2は離層形成に関しては優性であることがわかった。離層を形成する脱粒難のヘテロ個体と脱粒易の劣性ホモ個体とのあいだには、離層組織について明らかな差は認められなかった。以上の結果から、二つの遺伝子型で脱粒性程度に差が生ずる原因は、離層組織内の柔組織や、あるいは離層形成に関与する酵素活性などの生理的差異に起因するものと考えられた。 中国のインド型半矮性品種低脚鳥尖と矮脚南持ならびにわが国の日本型半矮性品種十石が半矮性遺伝子sdー1とともに脱粒性遺伝子shー2をもつていたことから、これらの品種を半矮性遺伝子源として育成された世界各地の半矮性品種はsdー1とともに脱粒性遺伝子shー2を有する場合が多いことが推測された。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 大場 伸哉,鶴見 裕子,菊池 文雄: "イネの半矮性遺伝子sdー1と脱粒性遺伝子の連鎖第1報インド型半矮性品種台中在来1号と日本型半矮性品種シラヌイにおけれ半矮性遺伝子sdー1と脱粒性遺伝子の連鎖分析" 熱帶農業. 33. 296-291 (1989)
-
[Publications] Oba.S and F.Kikuchi: "Linkage relationship between semidwarfing gene adー1 and gene for grain shattering in rice" Proceedings of the 6th International Congress of SABRAO. 305-308 (1989)
-
[Publications] Oba,S and F.Kikuchi: "Formation of abscission layer controlled by a shattering gene linked with a semidwarfing gene sdー1 in rice" Rice Genetic Newsletters. 6. 132-134 (1989)
-
[Publications] Oba,S.,K.Maruyama and F.Kikuchi: "Genetic analysis of semidwarfness and grain shattering of Chinese rice variety “AiーJioーNanーTe"" Japanese Journal of Breeding. 40. 13-20 (1990)
-
[Publications] 大場 伸哉,菊池 文雄: "イネ半矮性系統×46の持つ半矮性突然遺伝子の同定" 筑波大学農林技術センタ-研究報告. 3. 1-7 (1991)
-
[Publications] Oba,S and F.Kikuchi: "Genetic Studies of Grain Shattering in Rice in “Rice Genetics"" IRRI, (1992)