1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01560032
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
手塚 修文 名古屋大学, 農学部, 助教授 (10109316)
|
Keywords | 自家不和合性 / 花粉管 / 花柱溝細胞 / 柱頭 / 自家受粉 / 他家受粉 / ス-パ-オキシディスムタ-ゼ / カタラ-ゼ |
Research Abstract |
テッポウユリの自家不和合性反応は自家受粉して数時間後に花柱内の一層から成る特殊な花柱溝細胞から分泌される物質を介して花粉管と花柱溝の相互作用によって起こる。柱頭・花柱溝より分離した分泌粘液物質は自家受粉の花粉管伸長を促進した。更にこのメカニズムを解明するためアプロ-チの一つとして柱頭から花柱溝への直接・間接的シグナルとしてのマ-カ-を把握するために自家受粉による不和合性反応が一種のストレス状態に遭遇してイオンラジカルを多く発生し花粉管がスム-ズに伸長するための代謝系の乱れによる現象であると想定して研究を進めている。1989年度は特に他家受粉後、花粉管が著しい伸長期にある48時間目に自家および他家受粉した雌ずいの柱頭や花柱内の生化学的変動を以下のように調べた。開花1日後のテッポウユリの雌ずいを二分縦割して花柱溝への二酸化ゲルマニウム処理は自家受粉による花粉管伸長を促進(最適濃度:5μM)した。一方、ゲルマニウム無処理の他家受粉に比べて自家受粉した柱頭ではス-パ-オキシディスムタ-ゼ、カタラ-ゼ活性が高く花柱では両酵素活性に差は無かった。また自家受精した柱頭では他家受粉に比べるとNADH依存型、NADPH依存型の両グルチオン還元酵素活性も高い傾向にあった。以上のことからテッポウユリでは自家受粉により柱頭では一種のストレス現象が起こり、他家受粉に比べてイオンラジカルが多く発生して、何らかの仕組みで花粉管伸長の停止シグナルを花柱へ伝え、そこで花柱溝分泌粘液物質中の高分子物質から低分子物質への化学反応が抑制されるため花粉管伸長停止(抑制)が生じるという自家不和合性制御機構に何らかの大きな影響を及ぼしていると考えられる。今後はこの現象をさらに解析するためにイオンラジカルの測定やそのラジカルにカップルした代謝系の変動を把握して自家不和合性の制御機構を明かにしたい。
|