1989 Fiscal Year Annual Research Report
長距離移動性昆虫における多型発現の生理と内分泌制御
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01560054
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
藤條 純夫 佐賀大学, 農学部, 教授 (50011911)
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Keywords | ハスモンヨトウ / 相変異 / 貯蔵タンパク質 / 蛹型貯蔵タンパク質 / Arylphorin / 変態 |
Research Abstract |
これまでの研究で、ハスモンヨトウ終齢幼虫の血液中には蛹化前に脂肪体に貯えられるSL-1、2および3と名づけた3種の貯蔵タンパク質が存在するが、それらの内、SL-3は飼育密度によっては血液中での出現様相に影響を受けないのに対し、SL-1と2は低密度条件下よりも高密度条件で飼育した場合の方が出現時期が早められるという相変異特有の変動様相を示すことを明らかにした。当該年度は、これら3種の貯蔵タンパク質の精製および性状の検討を試みたものである。人工飼料を与えて高密度条件で飼育したハスモンヨトウ終齢幼虫から成熟直前に血液を採取し硫酸塩析を行なった。その25〜40%および40〜50%飽和分画を、Sephacryl400によるゲル濾過、DEAE-トヨパ-ル、ハイドロオキシアパタイト、ConAセファロ-ス、さらにはエレクトロフォカシングクロマトグラフィ-を行なうことにより、前者の分画からSL-1と2を、後者の分画からSL-3を、SDS-PAGEからみて単一の成分を示す段階まで精製することができた。いずれも8万前後のサブユニットより構成されていたが、SL-1と2のアミノ酸組成は筆者らがセクロピア蚕やカイコから精製した蛹型貯蔵タンパク質のそれに類似し、フェニルアラニンとチロシン含量は10%前後であることから、蛹型貯蔵タンパク質と結論した。一方、SL-3はこれまで多くの昆虫から精製されたarylphorinとアミノ酸組成がよく一致し、上述の芳香族アミノ酸含量は20%前後であることからarylphorinと結論した。精製した各タンパク質に対する抗体作成がようやくにして可能になった段階で、次年度はそうした抗体を用いて、相変異と貯蔵タンパク質との関連性、それらの内分泌制御についての解明が進展するものと期待される。
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Research Products
(1 results)