Research Abstract |
土壌伝染性植物病原糸状菌であるトマト萎ちょう病菌(Fusarium oxysporum f.sp.lycopersici)において,ミトコンドリアDNA(mtDNA)の制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphisms:RFLP)を調査し,本菌において既に知られている日本産レ-ス(race J1,J2)と米国産レ-ス(race 1,2,3,)および体細胞的和合性グル-プ(Vegetative compatibility group:VCG)間の遺伝的な関係を検討した。 1.トマト萎ちょう病菌の15菌株から分離したmtDNAについて,8種類の制限酵素(Ava l,Bgl ll,Dra l,Eco Rl,Hind lll,Hpa ll,Mps l, Pst l)を用いて,RFLPパタ-ン比較を行った。その結果,供試菌株は3つのグル-プ(mtDNAーI,II,III)に類別された。 2.mtDAN間の塩基多様度(nucleotide diversity:Nei & Li.1979)は,mtDNAーIとII間では0.05,mtDNAーIとIIIでは0.056.mtDNAーIIとIII間では 0.003であった。 3.mtDNAーIには,レ-スJ1(1):3菌株,レ-スJ2(2):6菌株,レ-ス3:2菌株の合計11菌株が含まれた。このうち,8菌株は同一のVCGに属し,残りの3菌株はselfーincompatibilityで,VCGが未定のものであった。mtDNAーIIには,レ-スJ1:2菌株,レ-スJ2: 1菌株が含まれ,いずれも同一のVCGに属した。またmtDNAーIIIには1菌株(レ-ス3)が含まれ,一つの独立したVCGに属した。 4.以上の結果は,mtDNAのRFLP比較により類別された群はVCGとよく一致するが,レ-スとはー致しないことを示し,さらにレ-スは各VCGごとで分化していることを示唆する。mtDNAのRFLP解析は,本菌分化型内の遺伝的分化を知る上で有効な手段であると考えられた。
|